頬杖をついていると、武留が注文を終えたようで微笑みながら僕を見る。
「そんなに見ないで」
「えー、だってめぐちゃん可愛いし。お腹すかせてるの?」
「うん。運動したからお腹空いた」
「空腹のめぐちゃんも可愛いよ。でもお腹いっぱいのめぐちゃんも見たい」
「……周りがおかしな目で見てるからそろそろ黙って」
いつの間にか、食堂中の注目を集めてしまっている。
というより、食堂全体がしんと静まり返っている。
普段喋らない武留が喋るからだ。
くそう。そう言えばこいつは小学校の時からずっと僕の前でだけ饒舌になるという誰得のスキルを持っている。
「武留、目立つの嫌いなくせになんで生徒会なんてやってんの」
「だって、めぐちゃんが生徒会の攻めってかっこいいって中1の時言ったから。だから、中学でも生徒会入ってたでしょ」
「えええええ。僕ぅ?」
「そうだよ。それから、めぐちゃんがヘタリアなのに字が綺麗って褒めるから」
「え、それで書記になったわけ? 確かに達筆だけどさ」
「そうだよ。だからご褒美ちょうだい」
「調子に乗るな」
少しだけざわめきは取り戻したものの、やはり聞き耳をたてられているようだ。
うんざりしていると、気まぐれディナーが運ばれてきた。
「シェフの気まぐれディナーが2つでございます」
ウエイターのうやうやしい声がする。
「わわ!」
ステーキにポテトサラダにチーズケーキ。
「おいしそう!」
「めぐちゃんの好きなものばっかりだね! よかったね!」
「うん! いただきます!」
武留の細かな注文のおかげで、気まぐれディナーはこれまでにない仕上がりになっている。
もうシェフの気まぐれでは全くない事に突っ込みを入れるのはやめておこう。
武留、ぐっじょぶ。
「いただきますじゃねぇ!」
パシコーンッ!
後ろから頭に空手チョップが降ってきて、ナイフとフォークを両手に持ったまま悶絶する。
「いったぁー!」
頭をおさえながら後ろを振り返る。
そこには般若の顔をした深海くんが仁王立ちしていた。