「めぐちゃん、くっつきすぎ! もう俺、我慢ならない!」
「わわっ!!」
武留に強引に腕を引っ張られた。
会長の懐に潜り込んでいた僕は、するりと会長から離れてしまう。
ソファから立ち上がり、武留の引っ張る手に引きずられる。
そのまますごい速さでリラクゼーションルームを飛び出して、会長を置いてきぼりにする。
「お、おい!」
後ろから掛かる会長の声に振り向こうとしたけれど、できなかった。
連れられた先は、中庭のような場所だった。
綺麗なお花が咲いている。
思わず状況を忘れて、綺麗な花々を眺めた。
いや僕っていいところ育ちだからね、花とかそういうものに趣を感じちゃうタイプなんだよね。
「めぐちゃん、はぁ、はぁ」
すっかり忘れてた。
ストーカー武留!
「武留。ストップ。ストップ。頼むから落ち着いて」
こいつは本当に大型犬かなにかじゃないだろうかといつも思う。
僕にあわよくば近寄ろうとしてくる武留をストップさせる。
そういや最近武留を見ないなぁと思ってたんだよね。
僕がこの学園に来てとうとうおさらばできたかと思っていたのに、三重苦が重なって身動き取れなかっただけね。
というより、敵の本丸に僕が乗り込んじゃったっていう最悪のパターンね。
「めぐちゃん! なんか男の匂いがする!」
くんくんと鼻を動かした武留は、僕の首元を嗅ぐと悲しそうな顔で見つめてくる。
相変わらずワンコ属性がすごい。
僕って王道が好きだから、俺様の攻めとか美形攻め大好きなんだけど、ワンコ攻めってあんまり萌えないんだよね。
だから、武留って萌えない。
まぁでも武留って、こんな残念な感じだけど、見た目は美形なんだよなぁ。つくづく残念な奴。
「もしかしてめぐちゃん、……男を覚えた?」
「なにそれ。匂ったりする?」
確かにこの学園に来て、すでに数人が僕のアナルにこんにちはしたけども…。
メスの匂いでもしているのかと急に不安になってきて、自分のシャツの襟元をくんくんと嗅いでみる。
柔軟剤の匂いしかしないんですけど!!!
「武留のうそつき! 匂いしない!」
「匂いじゃなくて、フェロモンというか、そんな感じ」
ふぇ、フェロモンですと?
僕に? エンジェルなら確かにむんむん出てるし、会長も臣も、あー、深海くんも出てるなぁ。
深海くんは今日お昼何食べたんだろう。
お肉系だろうなぁ。