「え、おせち?」
「いや、松花堂弁当のようなものだ」
「おせち以上の豪華さですけど……。伊勢エビ、牛肉のタタキ、トロのお刺身。なんだこれ!!!」
「まぁ好きな料理だけ食えばいい」
「うえっ! そんなの全部だよ! どうしよう!」
「ははっ、食べられるだけ食えよ」
あ、笑った。
笑った! 笑った! 会長が笑った!
クララが立った並みの感動なんですけど!
爆笑ではないけど、このレベルの笑いだって珍しいはずだ。
だって、僕が会長の笑っているところを見たのは本当にこれが初めてだ。
僕はほくほくした気分で、ソファに座った。
会長が隣に腰掛けて、僕に箸を渡してくれる。
一緒に豪華なお弁当をつまんだ。
僕はたくさん、たくさん食べたけど、それでも全部はさすがに無理だった。
会長はてきとうに箸を入れていたけど、僕の方が倍くらいは食べた気がする。
「会長、満腹!」
「そうか」
「おいしかったなぁ、こんなの毎日食べたら太っちゃうよ」
「毎日ではない。今日は、お前と昼飯をしようと思ってだな、料理人に頼んでおいたんだ」
「へ? 僕と食べるために?」
不思議になって、隣の会長を見上げる。
会長は僕の肩を抱き寄せると、僕の頭にうやうやしく唇を落とした。
「あぁ、それでだな、その、放課後、俺の部屋に……」
バァン!!!
勢いよく扉が開く音がして、会長に肩を抱かれたまま扉を見つめた。
「めぐちゃんの声がした!!!!」
「あ?」
「げ!!!!」
会長の不審そうな声と、僕の雄叫び。
「な、なんで、あんたがここに……」
僕の震えた声を察したのか、会長が僕を覗き込んでくる。
自衛本能が働いて、会長に身体を寄せるようにすり寄る。
「巡? 知り合いか?」
「知り合いっていうか、」
「あいつが書記だぞ。大和武留(やまと たける)だ」
「ここの生徒の上に、まさかの書記いいい!?」
僕は自分の運命を呪った。
なんでこんな奴がいる学園に編入したのか。いくら萌えのためだとはいえ、こんな不幸はない。