書記は不幸のスパイラル
「行くぞ」

「はい」


どこに行くのだろうか。
訳も分からず後ろをついて行く。

背が高い。背中も大きい。


でも、……早漏なんだよなぁ。
それも超ど級の早漏………。
うん、なんだかやっぱりすごく残念だよ。


「そう……っ、会長」


やっべ!
早漏って呼ぶところだった!殺されるところだった!
巡はまだ死にたくありましぇんよ!


「あ?」

「どこ行ってるんですか」

「あぁ、生徒会だけが使用できるリラクゼーションルーム」

「ほえ!!! そんなのあるの!」

「割と快適だ」

「ほえー!!!!」


さっすが、王道のお金持ち学園。
そんなものまで用意しているなんて、叔父さんさすがだね。


教室棟から少し離れたところにそのお部屋はありました。

ペルシャ絨毯に、ロココ調家具が揃っていて、猫足のテーブルもソファもものすごく高そうだ。

ベルサイユ宮殿に迷い込んだようなその場所をぽーっと眺める。


「会長! すごいです、ここ!」

「気に入ったか?」


会長は相変わらず抜群に整った顔で僕に振り向く。
だけど、笑みはあまり浮かんでいない。

いつも不遜な顔をしている。
一体この人が爆笑することってあるのだろうか。すごく謎。


「ここは崎原や耳野はあまり使わないからな。今はどうやら俺だけのようだな」

「そうなんですか。使わないなんてもったいない」

「まぁ、元々ここは書記が居ついていたんだ」

「へぇ、書記さん。まだ会ったことないなぁ」

「あぁ、あいつなら両足複雑骨折とノロウィルスとおたふくかぜで、ここ1ヶ月ほど学校に来ていない」

「………なにそれ、死ぬの」


ものすごく不幸が重なっている人だ!
なんだそれ。マジで近づいてほしくない。



「そろそろ戻ってくるだろうが、変わった奴でな。ほとんど誰とも口を聞かないもんだから、俺たち生徒会もよく分かってないんだ」

「そんなので生徒会なんて務まるんですか?」

「まぁ、見た目と頭だけはいい奴だからな。生徒会の仕事も問題なくこなしている。コミュ力はかなりまずいもんだが」

「無口ワンコの可能性ありか……ふむ悪くない」


1人でぶつぶつ言っていると、テーブルに置かれていた重箱が目に入った。
僕の視線に気付いて、会長が「ああ」と声を出す。


「うちの料理人に用意させておいた。昼飯だ」


会長が3段重ねの重箱をそれぞれ開けていく。


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