突然の来訪者、その名は
ある日のお昼休み。
いつも深海くんとサッカー部の沢村くんと食堂でご飯するんだけど、今日はいつもと少し違います。

さかのぼること10分前。
授業が終わるチャイムが鳴った瞬間。


さぁお昼休みだぞぉってところで、扉が開いたのです。


まだ教師も教卓の前に立っていたくらいだから、扉が開いた瞬間、一瞬しんとしました。


その一瞬後、きゃあああ!とチワワ系クラスメートたちが悲鳴をあげたのです。
僕もつられて、きゃあああ!と。

条件反射です。はい。
言い訳ですが、条件反射です。

本当に高まったわけじゃないのに、ヤキモチ妬きの深海くんにそんな事は通じません。
後ろの席から遠慮のないゲンコツが降ってきて、「うるせぇ!!!」とよっぽどうるさい声で怒鳴りつけられました。

深海くんの隣のチワワ系クラスメートの事は殴らないのに、僕だけ。なぜ。


叩かれた頭を両手でおさえて、涙目になっていると、来訪者は僕を視界に入れて。


「巡、飯行くぞ」と声を掛けたのです。

「ふぁい!」と変な返事をした僕に、来訪者はやはり偉そうに「早く来い」と命令したのでした。



そうです。
来訪者の名は、生徒会長、西園寺帝様です。



とっさに扉の方に足を向ける。

手を後ろからパシッと握られて、振り返った。


後ろの席の深海くんが座ったまま、僕をじっと見ている。




「し、深海くんごめん。今日のお昼は僕抜きにして」

「いいけど。会長とも知り合いだったのか?」

「あ、うん。この前、……仲良くなって」

「お前、なかなかすげぇ奴だな。授業遅れんなよ」


深海くんが珍しく笑ってくれたので、僕はぽーっと釘づけになった。

こくりと素直に頷く。
深海くんはそれで満足したのか、手を離して僕を解放してくれた。


まさか会長の弱みを知ってしまい、その後アッー!しましたなんて言えるわけない。
仲良くなった事は確かだ。色んな意味でだが。
さすがの僕でもそういう嘘はつける。


後ろ髪を引かれながら会長のそばへ歩いて行く。
相変わらず尊大な態度で立っている会長は集中する視線をばっさり無視している。


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bkm
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