「今日はいっぱいお話しよう。僕、巡くんともっと仲良くなりたい。崎原とばっかり仲良くして。ムカつく」
「臣? 臣とはそんなに仲良くないよ。大丈夫! 安心して」
やっぱり光くんは副会長の臣のことが好きなんだな。
ツンデレなの?
はっきり臣に好きって言えばいいのに、遠回しな言い方しちゃって。そんなところが可愛いです!
確かにこの前2人が一緒にいた時は、臣も素直じゃなかったな。
2人とも今更照れくさいってやつなの?
なにかアクシデントとか無いと、友達の壁は越えられないって、BL漫画にある理想的なパターンのやつなの?
僕がアクシデント作ろうか?
お茶と見せかけて、お酒でしたみたいな、そういうアクシデントがお望みかい?
酔っぱらって、襲い受けなんて最高だね!
「ふふ、ふふふ」
「崎原はやめておいた方がいいよ。あいつ見た目爽やかそうだけど変態だし」
僕の気持ち悪い笑いを光くんは見て見ぬふりをしたようだ。
「うん、まぁそう、だね。変な趣味だった」
「え、なにかされたの?」
「なにかって、まぁ。その、ね」
「なに? 教えて?」
上目使いと首傾げのコンボが炸裂。
僕のゆるい口はさらにゆるゆるになった!
「え、え、あの、おしっことか。するの見られた」
「はぁぁぁ!? なにそれ! 崎原、マジむかつくんだけど。え、それって1回目で?」
「う、うん」
「ばっかじゃないの、あいつ! マジ変態」
光くんの悪態にぽかんとする。
怒ってるの? やきもち妬いてるの?
「光くん、落ち着いて。大丈夫だよ、臣も光くんにはきっとそんな事しないよ」
「当たり前。そんな事させられたら殺すよ。崎原なんて」
「WA−O!」
僕は海外の通販テレビのようなリアクションを取ってしまった。
だけど、光くんは憐れむように僕を見て、優しく頭を撫でてくれた。
「可哀想に。僕ならそんな事しないよ」
「う、うん。光くんはそんな趣味ないんだね」
「すっごく優しくするから。今日は薬も盛ってない。乱暴な事しないから、ダメ?」
「え? え? ダメって、え? な、なにを?」
「なにをって、エッチ」
「ほえ……」
「巡くんのアナルに僕のちんこ挿れるの。気持ちいいよ」
ガラガラと何かが大きな音を立てて崩れ去った。
そう。
僕は忘れていたのだ。
記憶を封印していたと言ってもいい。
人間はあまりにショックな出来事が起こると、自衛本能で記憶を喪失するという。
そう。
僕は忘れていたのだ。
光くんが攻めだってことを!!!
今、パンドラの箱が開いてしまった……。