「どっちがいい?」
「あ、えっと、どっちでもいいです」
「じゃあ、半分こする?」
「うん、します!」
僕って今鼻の下伸びてない?
だって可愛いんだもーん!
いや、そこら辺のアイドルよりまじ可愛いから。まじリスペクトだから。
光くんはショートケーキの三角の先をフォークに乗せると、僕へとフォークを持ってきた。
「あーん」
「え、え、え、あ、あーん」
ずいっと口の前に生クリームを押し付けられて、慌てて口を開く。
そ、そういう半分こなのね!
先に切り分けてからとかじゃなくって、そういう!そういう半分こ!
滑らかにフォークが入ってきて、甘い食感を口の中に広がる。
「おいしい?」
「うん、おいしいです」
「じゃあ、僕にもあーんして。ね?」
「う、うん。ちょっと待って」
フォークにショートケーキを乗せて、プルンとした口元に運ぶと、雛鳥みたいにゆっくり口が開いた。
小さな白い歯まで整っている。
僕は半ば見とれながら、口の中にケーキを運ぶ。
「ん、おいしいね」
「はい、おいしいです! ……ていうか」
「ん?」
「叫んでいいですか?」
「え? ん? なにを? いいけど……」
「光くん、超可愛い! 超可愛い! 本当に天使なんだけど! 可愛すぎてどうしよう。死んでしまいそうだよ!」
あまりの高ぶりに声に出さずにはいられなかった。
言われた張本人は一瞬ぽかんとしてから、くすぐったそうに笑った。
「巡くんのが可愛いよ」
「そ、そんなことないです! いや、ほんとマジで可愛いの! 世界中のみんなにこの気持ちを伝えたい! あ、シンガーソングライターにでもなろうかな?」
「ふふ。じゃあ、僕CD買うね」
「うそ! あ、写真家とかもいいかな! 篠山巡なんて名乗って! 天使の写真集発売。え、だめだ。そんな事したら光くん人気出すぎて誘拐とかされそう! それはダメ!」
叫ぶように言うと、光くんが面白そうにくすくす笑った。
鈴の鳴るような声にうっとりする。
「巡くん、お笑い芸人になれるよ」
「え? お笑い芸人になっても、光くんの良さは世界中に伝わらないよ?」
「うん。そうだね。それじゃあだめだね」
「そうだよ! もっと効率のいい方法を考えないと……!」
何が面白いのか、光くんは笑いが止まらないようだ。
そんなおちゃめなところも可愛い。