それでますます……。
「好きになりすぎて辛い。ずるい」
「なんでそれがずるいんだよ」
ふはっ。
って、口から洩れたみたいな笑い声にさえきゅんとする。
「深海くんのばか。純情な男心をもてあそんで! 巡はそんな悪い男につかまってしまいました! お父様!お母様!」
「はいはい、うっせーうっせー」
両方の頬を片手でむにゅっとつままれた。
「お、黙ったな」
深海くんは僕の頬をするりと撫でたかと思うと、ちゅっと唇にキスを落とした。
「……んっ」
あまりの不意打ちに思わず声が上がる。
深海くんは触れるだけのキスを終えると、さっさと僕から離れて自室に入っていこうとする。
「し、深海くん、もう1回して!」
「すっげぇ眠くなってきたからまた今度な」
「今度っていつ! 地球が何周回った時なの! ねぇ!」
ズンズンと深海くんの部屋にまで足を踏み入れてねだる。
目の前を歩いていたスウェット姿の彼は、顔だけ振り返ると僕に視線をやった。
「今日土曜で休みだろ。一緒に寝るか?」
「え、寝る! 全然眠くないけど寝る」
「あ、言っとくけど寝るだけだぞ。やらねぇからな」
深海くんはそれだけ言うと、ベッドにさっさともぐりこんでしまう。
「うん!分かってます!」
僕も同じようにベッドに入ったけど、セミダブルのベッドに男2人だと少し狭い。
それをいいことに、深海くんに寄り添うように布団に入った。
かっこいいなぁ。
会長の顔もびっくりするくらい綺麗だったけど、僕は深海くんの男らしくてワイルドな感じもする目つきの悪い顔のが好き。
「おい、目閉じててもお前の視線感じるんだけど」
「じゃあ、ちゅうして」
「日本語話せ」
「えっとね、今度は3秒くらい。さっきよりもうちょっと長いのして」
「まだ俺はするとも言ってねぇんだけどなぁ」
深海くんは閉じていた目を開いて僕を見た。
頬杖をついている。
寝ることを一旦諦めたらしい。
「すき」
僕がぽつりと告げると、深海くんは困ったような顔で僕に顔を近づけてきた。
「ん、ふぁ……」
少し長いキスをくれた深海くんは、僕の髪を優しく撫でると、今度こそ目を閉じた。
僕はこれっぽっちも眠たくなんてならなくて、ずっとずっと深海くんの寝顔を見ていた。
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bkm