朝帰りは忍び足で
「……ん。何時だろう」

ぐるりと広い部屋を見渡して、壁に掛けられた時計を見る。


「ん? 6時。6時。外明るい。鳥の声聞こえる。6時、朝。朝。ぎゃああああ! 深海くん! 深海くんに怒られる! 殺される! 朝帰りだめ!絶対!」

「巡? なんだ、うるさい」

僕の発狂で会長が目を覚ましたらしい。

「かいちょ、僕帰らなきゃ。同室の人が心配してるの、多分」

「あぁ、そうか。じゃあ、最後にキスしてくれ」

「ん。会長、おはよう」

「おはよう。ん……」

ちゅっちゅっとキスを交わして、起き上がる。
制服はどうやら会長が着せて帰ってきたらしく、ちゃんと会長の部屋にあった。

それを身に着けて、さっさと部屋を出る。
会長はベッドの中で様子を見ていたけど、僕が部屋を出る時にはひらひらと手を振ってくれた。

廊下を走っている途中で、ガクンと腰がくだけて床に追突した。
どうやら会長とのエッチで足腰がガクガクらしい。


「いったーい。鼻血出た。痛い。でも深海くんとこ帰らなきゃ」


鼻血を出したまま、自分の部屋に戻ると、案の定リビングに電気が点いていた。

扉を開けると、ガタガタと音がして、深海くんが出てくる。


「おい、どうした」

「ごめん、深海くん。ごめん。遅くなって。あの、」

「いいから、ほら、とりあえず鼻血拭け」

「ごめん。ん」

鼻をぐいっとティッシュで乱暴に拭かれた。

深海くんを見上げると、いつもの怖い顔にさらに人相を悪くするクマを作っていて、僕はそれを見て眉を下げた。


「ごめん、寝てないの?」

「いつまで経っても連絡をすることを覚えない誰かのせいでな」

「ご、ごめん、深海くん! 嫌いにならないで、お願い……っ」

涙がうるうると込みあがってきた。
深海くんに嫌われたら僕はこの学園にはもういたくない。
いくら僕の強靭なハートでも、好きな人に嫌われたまま、同室で暮らすなんて耐えられない!


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