椎名のたくましい腹筋は俺のでどろどろに汚れている。
椎名は自分の腹筋についた精液を綺麗な指で掬い取ると、おもむろに口元に持って行った。
赤い舌先で舐めている。
じっとその様子を見ていると、椎名は幸せそうに微笑んだ。
「千紘さまにはあげませんよ」
茶目っ気たっぷりのその言い方に胸がぎゅっと疼いた。
「お前が冗談を言うなんて珍しい」
「冗談じゃありませんから」
椎名は俺を惑わすように笑みをこぼす。
たまらなく幸せになって、愛おしくなって、テーブルに横たわったまま椎名を見上げた。
「椎名。好き」
「……ありがとうございます」
「お前が世界で1番だ。兄よりも、親よりも。そばにいてほしい」
「はい。私も千紘さまがそばにいれば何もいりません」
椎名は俺の頬を優しい手つきで撫でた。
それから、ゆっくりとお尻に入ったままのものを引き抜いた。
「んぅ……」
鼻から抜けるような声が零れた。
椎名が出したものがたらたらとお尻を伝っていくのが分かる。
むずがゆくて身をよじると、椎名が俺の頭を何度も撫でた。
「掻きだすから、ちょっと後ろ向いてもらっていいですか?」
椎名の声は穏やかだ。
抱き合っているときとまったく違う。
あの時の椎名はやはり別人のようで、思い出してくすりと笑う。
椎名が宝物を扱うように手つきで処理するのをじっと眺めながら、やっぱり俺は椎名のことを想った。
家に帰ったら、安野にお礼を言わないとな。
大事な人と仲直りできたって。
多分、帝お兄様のことだと誤解するんだろうけど。
帝お兄様には悪いけど、代役になってもらおう。
「あ、そういえば」
「はい?」
「来週、皇馬(こうま)お兄様が帰ってくると思う。両親は帰ってこないけど」
「皇馬様というと、1番上のお兄様ですね。ご長男の。なぜですか?」
「俺の誕生日には毎年帰ってきてくれるんだ」
俺が嬉しさを隠しきれずに告げると、椎名が切れ長の目を瞠った。