クリスマスが間近になった頃。
今日も変わらず椎名とお茶をしていた。
外はびっくりするほど寒いから、メイドや執事には反対されるけど、俺は庭で椎名と過ごしたかった。
椎名を家の中に招いてお茶をすることもできたけど、何となくそれじゃ嫌だった。
そのせいで最近、庭の一角に小さな家を作る事を父に申請していると、執事長に言われた。
みんな過保護だな。
まぁ父も庭には興味がないだろうから、そんなものを作ることに反対はしないだろうけど。
本宅とは名ばかりで、父と母は他にたくさん過ごす家を持っているから、ここにこだわりはないだろう。
「千紘さま、お寒くないですか?」
「うん。大丈夫。安野がうるさいから、暑いくらい厚着してる」
「そうですか。それなら良かったです」
何枚も肌着を着せられて、分厚いコート。
その上、毛布みたいなブランケットを持たせられている。
風邪を引かれたら安野たちが怒られるから困るのだろう。
「みなさん、千紘さまが心配なんですね。気持ちが分かります」
「そうか? 俺は他の人はどうでもいい。椎名に心配される方が嬉しい」
「ふふ、はい。私が誰よりも千紘さまの事を好きですからね」
椎名が微笑む。
それだけで真冬なのに、胸が温かくなる。
俺はじっと椎名の肌のきめさえ見透かすように見ていると、椎名が不意に俺の後ろに視線をやった。
慌てて立ち上がった椎名に首を傾げる。
後ろを振り返ったと同時に、声がかかった。
「千紘。こんなところにいたのか。寒いだろう」
「……え、帝お兄さま!?」
「あぁ、ただいま。千紘」
思わず椅子から立ち上がって、帝お兄さまに抱き着いた。
大きな体は俺を難なく受け止めて、背中に両手を回してくれる。
そのうち、抱え上げるように抱っこされてしまった。
「元気か、千紘」
「うん。お兄さまは?」
「あぁ、学校が冬休みに入ったからな。ちょっと家に取りに来るものもあったし、お前に会いに」
「そうなんだ。今日は晩ごはん一緒に食べんのか?」
「そうだな。晩飯まで一緒に食べたら、学校に戻ろうかな。それまで一緒にいてやる」
「嬉しい! じゃあ、学校の話聞かせてよ!」
「ああ、いいぞ」
帝お兄さまは俺の髪を優しく撫でた。
俺は夏以来何か月かぶりに会った兄が嬉しくて、すり寄るように胸に顔を寄せた。