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「赤い顔で帰ると、安野が不思議がるだろう」

文句を言う。

「そうですね。千紘さまの肌は白いから、すぐに赤さが目立ちますね」

「ほら。お前のせいだとはっきり言うからな」

椎名が笑って、俺も笑った。


「なぁ、そういえば椎名って何歳なんだ?」

「あぁ、教えた事ありませんでしたね。私は25歳です」

「へぇ! 若く見えるな」

「そうですか? ふふ、ありがとうございます」


25か。
俺とは15も差があるのか。

宮村は28歳だったから、宮村と椎名の方が随分自然だ。
俺と恋愛関係だなんてバレたら、うちの家どころか世間でもまずい事なのだろう。

それでも椎名は俺を選んだ。
もうすでに1ヶ月以上経つ。
いまだに椎名は俺を手放そうとはしない。

ほかほかした気持ちになって、椎名を見上げた。


「抱っこして」

「どうしたんですか? 急に」

椎名はそう言いながらも、俺の両脇を掴んで抱き上げると、腰に手を回してくれた。

俺も背中にぎゅっと腕を回す。


「椎名、俺の事選んでくれてありがとうな」

「え?」

「きっと悪いようにはしないから。お前が困らないように大事にするから」

「……はい。嬉しいです。ありがとうございます」

「うん。お前は大人だから、俺との関係で悩んだりしているんじゃないかと思ってな」

「まぁ、悩んだ事がないわけじゃないですけど、離れるつもりはありませんよ」

「うん。これからもよろしくな」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」


椎名と見つめ合った。
吸い込まれそうな綺麗な瞳と目が合う。

引き寄せられるように唇を重ね合わせた。
しっとりした感触をしばらく味わって、ゆっくり離した。


「じゃあ、帰る。もうすぐそこだけどな」

「はい。帰りましょう」


椎名は俺を抱っこしたまま、玄関先までたどり着くと、ゆっくり俺を地面に下ろした。

椎名に手を振る。
俺を甘い瞳で見つめて、頬を緩ませて、手を振り返してくれた。


扉の中に入ると、室内は暖かい。
玄関先まで暖房が入っている。

俺の帰宅に気づいたメイドが慌てた様子で近寄ってきた。


お風呂の用意も、紅茶の用意もできていると告げられた。
だけど、さっきまでの方がもっと温かかった。

今すぐ扉を開けて、椎名に抱きしめてほしかった。
そんな風に思う自分が恥ずかしくて、一人苦笑した。


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bkm
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