授業が終わって、宮村が出て行く。
見送った後に、窓の外を眺めると、椎名がホースを持ちながら、花壇の花に水をやっていた。
それをじっと見る。
こちらを振り向くことはない。
まぁ仕事中だからな。
当たり前だ。
じっと窓から椎名の様子を眺める。
次の家庭教師が来るまで20分ある。
今までは紅茶を飲んだり、勉強の復習をしていたのだが、最近では椎名を眺めることが日課となりつつある。
いつもあいつは熱心に仕事をしていて、少しくらい休憩したって誰も注意する者などいないのにと思うけど、それが椎名のいいところなのだろう。
でも今日はいつもと様子が違った。
というのも、宮村が現れたのだ。
屋敷から出て、庭に踏み入れたらしい。
屋敷から正門へ行くまでは豪華な石畳の大きな道がある。
庭を通らないといけないことはない。
石畳の道の両脇に広がる庭は広大で、椎名の事は探さないと会えない。
それなのに、宮村は椎名の元に辿りついた様子だ。
じっと窓枠の間からその様子を眺める。
何やら話をしているらしい。
椎名は相変わらず極上の笑みで宮村を見ている。
宮村の今日の服は胸を強調する服で、きっと椎名の視界にも入っている。
そんな事がなぜか気になった。
胸のあたりがチクッとした。
宮村は俺に背中を向ける形になっているから表情は分からないけど、肩を揺らしている。
笑っているのだろう。
楽しそうなことは確かだった。
大人の男と女。
絵本でも映画でも、恋人たちは皆男と女だった。
年齢も俺と椎名ほど離れているなんて聞いたことがない。
宮村と椎名の方がよほど似合いだろう。
椎名もやっぱり女性を好きになったりするのかな。
俺とは恋人になったけど、俺の前は女性が恋人だったのかもしれない。
それなら。
……そのうち、やっぱり女性がいいって思うかもしれない。
はぁっ、とため息をついた。
考えても仕方のない事をぐるぐると考える。
マイナス思考。くだらないものだ。