「お前も俺に恋してるの」
「はい。ずっと恋してました。好きです」
「……うん。俺もお前が好き」
大きな背中に腕を回す。
細身なのに、それでも椎名の背中は随分大きくて手は回りきらない。
好き。
小さな頃、俺を可愛がる兄たちの事も好きだと思ったけど、その時とは比べ物にならない好きを持て余す。
今日、知り合ったのに。
でも、もうこんなにも椎名が好き。
毎日会いたい。毎日こいつの声が聴きたいし、こうして抱きしめてほしい。
「椎名。お前、明日も来る?」
「はい。水曜と日曜はお休みを頂いておりますが、それ以外は毎日庭のどこかにいます」
「そう。じゃあ、お前に会いに行くな」
「はい。一緒に花を見ましょう」
しゃがみこんだ椎名に抱きしめられて、椎名の肩口に顎を乗っけながら言う。
照れくさくてぶっきらぼうな響きを帯びた俺の声にも、椎名は穏やかに返事をくれる。
照れを隠すように、肩に頬をすりつけた。
「もう1回、好きって言って」
「はい」
俺がわがままなお願いをすると、椎名は何の迷いもなく返事をくれる。
それから間髪入れずに、「好きです」と椎名の低い声が俺の耳元でささやく。
背中が粟立つ。
指の先まで電流が走ったみたいだ。
思わず背中に回した手で、椎名の服をぎゅっと掴んだ。
つかまってないと怖い。
しばらくぎゅっと抱きしめあっていたけど、気持ちが落ち着いてきて身体をゆっくりと話した。