「やっぱり、間違えてた! 返せよ。また明日違うの持ってくるから。コスモスのお礼、したかっただけでさ。慌ててたからごめんな」
焦って矢継ぎ早に話すと、ハッとしたように椎名が俺に目線をやった。
びくりと体が震える。
「すみません、感動してしまって。本当に嬉しいです。今までもらったものの何よりも嬉しいです。ありがとうございます」
……あ、俺と一緒だ。
俺もあのコスモスが何よりうれしかった。
胸の奥にぽうっと熱がこもる。
嬉しくて、嬉しくて、この男ともっと一緒にいたい思いが膨れ上がる。
椎名が俺を見て、嬉しそうにはにかむ。
しおりを男の大きな手がふんわりと包んだ。
それだけで胸の内が苦しいくらいになって、なぜか鼻の奥がつーんとした。
「あのさ」
「はい」
しおりを見ていた男が俺へと視線を向ける。
その視線は温かみを帯びているのに、俺の心臓はまた火傷しそうに熱くなった。
「なんか心臓が、熱いんだけど……、これってなに?」
「え? 心臓が熱い?」
慌てたように椎名が俺に近寄って、心配そうに顔を覗き込んできた。
俺はそれに素直に頷いて、詳しく説明する。
「お前見てると、ここがドキドキして、なんか泣きたくなる。なぁ、これってなに? こんなの初めてなんだけど」
「…………っ」
椎名は俺の顔を覗き込んだまま、固まってしまったようだ。
そんなに深刻なのか、俺の症状は。
もしかして病気か?
元より丈夫な身体なのに、大病がひそんでいたというのか。
「あの、それは、俺を見るとそうなるんですか」
「……今、そう言っただろ」
「は、はい。それはその、」
「そんなに大変なことなのか?」
「大変というか、いえ、俺は嬉しいですが」
「お前が嬉しい? ん? なんで」
話がかみ合っていないように思う。
俺は病気なのかと聞いたのに、椎名は嬉しいというのか。
なんて失礼な奴なんだ。
腹が立ってきた。