「?」
がら、と教室の扉が開く音がして、シャーペンを走らせる手を止めた。

「あ」
「!」
まだ人がいた、とおれの姿をみつけて言う。眩しい。顔の周りに何かキラキラするものが飛んでいる。伊澤だ。
見惚れていたら、奴がおれのそばまで近寄ってきて、目の前の席に腰掛けた。
「なにこれ、数学?」
おれの手元を覗き込んで、聞いてきた。
「うん、」
何だろう、この状況は。
なんといま、おれはこの教室で、ひそかに片思い中の、あの伊澤と二人きり。しかも、普段じゃありえないぐらい近い距離にいる。
遠慮がちにその顔をみたら、やっぱりキラキラして、整っていて、悔しいけどかっこよかった。
「ん?」
「…っ」
ちらちらと見ていたら、気づかれてしまった。顔が熱くなって、慌てて俯いた。突然現れた伊澤に気を取られすぎて、右手が止まったままだった。早く課題を仕上げなくては。
よし、集中しよう。
前は見ない、気にしない。



「宮田さあ、最近よくおれのこと見てるよね」
「……」
やたらと難しい問題に頭を悩ませていたら、急にそんなことを言われてまた手が止まった。
「……え?」
恐る恐る前を見る。
目の前のイケメンは、にこにこと笑顔を作る。
「何か言いたいこと、あるんじゃない?」
「……」

それはまるで誘導尋問のようだった。
「早く言わないとお仕置きしちゃうぞ」とでも言わんばかりの笑顔で見つめられて、おれは思わず「ずっと好きでした……」と告白してしまった。
「おれと付き合いたいの?」と言われたから、混乱して声も出せずに何度か頷いた。すると、奴は「いいよ」と、また微笑んだ。
課題は結局終わらず、翌日も居残りさせられた。

これが、二週間ほど前の話し。



 

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