あのクラスメイトは、それはもうまるでモデルか何かと見間違うような容姿をしている。

すれ違う女子たちは、皆振り返るし、何か行動を起こせば黄色い悲鳴。
容姿に加えて、誰にでも平等に優しい。いつもにこにこと微笑んでいる。頭もそこそこ良い。当然ながら、おれとは違って、交友関係も広い。周りには人がたくさん。何もかもがおれとは別次元の存在だった。
だからいつも、おれはその様子を遠目から眺めるだけの、ただの傍観者だった。
特に話しをするわけでも、仲が良いわけでもないが、なぜか惚れてしまった。
理由は至極単純。階段を降りる最中に、足を挫いてすっ転びそうになったおれを助けてくれた。
「大丈夫?宮田」
「……あ、ああ、うん」
名前知ってんのか、と驚いた。
そして、初めて間近でその顔をみて、心臓がうるさく鳴った。自分と同じ、男にときめいてしまった瞬間だった。
これが、約三ヶ月ほど前の出来事。

それから、おれは、この超絶イケメンーー伊澤のことが気になって仕方なくなった。教室で楽しそうに談笑する姿。授業中にノートをすらすらと書き写す姿。体育の時間には、更衣室でその身体を盗み見たりした。
服を着ていると気づかなかったが、意外と筋肉質なんだな、と一人で顔を赤くした。自分でも、自分のことがそろそろ気持ち悪くなってきていた。



あの日は、補習で残されていた。
おれはクラスでも地味な方で、そのくせ、勉強もできなかった。運動も微妙。とにかく取り柄が見つからない。
この前の中間テストの点数が悪すぎて、いつもの倍ぐらいの課題が出されて、困り果てていた。

(お、終わんねえ……)

今日中に提出しろとだけ言い残して、教師は去っていった。ちなみに教室にはおれ一人。数少ない友人たちは、だれ一人手伝ってくれようともせずそそくさと帰ってしまった。冷たい奴らだ、まったく。
「うーん……」
この数式が、こうで、ここがああで、と一人でぶつぶつとつぶやきながら、苦手な数学と格闘しているときだった。


 

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