好きでしかたないのに、変だなあと思う。
隣にいられるならそれでいいのに。ふたりきりなら、なおさら嬉しいはずなのに。
こうやって、家に呼んでくれて、だれにも邪魔されずにそばにいられるのに。


「……ごめんね…」
「…っ、っ、……」
違うよ、と言いたくて首を横に振る。
そのせいで涙がぼたぼたと床の上に落ちていく。

ワンルームにあるベッドが見えた瞬間に、もうだめだった。気づかれたくなかった。心配をかけたくなくて、黙っていた。だけど、伊澤はすぐにおれの異変に気がついた。まるで、ねじでも外れたみたいにおれの目から涙が出た。

「…っ、……、」
「宮田……」

絞り出すような声で伊澤がおれを呼ぶ。
抱きしめてくれている。おれは伊澤の腕のなかが大好きだ。
もう、ほんとうに何てことはないのに、なんで。伊澤はこんなにやさしくてあたたかいのに、どうしておれは。


「……」
「…っ、う、……」

ふたりきりの部屋に、おれの泣き声だけがする。伊澤は何も言わない。ただずっと背中を撫でてくれる。
こんなふうになるつもりで、一緒にいたいと言ったわけじゃない。伊澤とふたりで笑っていたいだけだった。どうして、おれはいつも泣いてばかりいるんだろう。伊澤といると、伊澤のことを想うと、涙ばかりが出てきてしまう。
こんな、情けないおれに、いつか伊澤は愛想を尽かして、いなくなってしまうかもしれない。どうしよう。どうすれば、ちゃんと伊澤と向き合えるかな。どうしたらもっとうまくできるんだろう。

「伊澤、っ、いざわ……」

せっかく恋人同士になれたのに、おれたちはいつまでたっても距離感をつかめないままでいる。近づきたいと思えば思うほど、苦しくなる。だれかを好きになるのは、思ったより難しいことみたいだ。

「……、宮田、ごめんね、好きだよ、宮田…、大好きなんだ……」

無理ばかりさせてごめん。
離してやれなくてごめん。
宮田が、おれを好きになってくれて、おれは救われたんだ。
おれのこと、嫌いにならないでほしい。
おれは宮田がいなくなったら、きっと生きていけない気がするんだ。
ごめんね、宮田。あいしてる。


「…っ……」

それでも、おれたちは、お互いを手放すことなんて考えたりしない。
どれだけ苦しくてもつらくても、好きになるのをやめられない。こうやって抱きしめられて、声が聞ける。なによりの幸せだった。
伊澤さえいれば、苦しさなんてもうどうでもよくなってしまいそうだ。

「伊澤……、大丈夫だよ、おれならもう平気なんだ、だから…、おれが泣いてもやめないで、」
「……」

もう一度、伊澤とつながりたい。
何も考えられなくなるくらいに抱いてくれたらいい。
おれもあいしてるんだ、伊澤。


 

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