「……げほ、っ…」
喉の痛みと咳がなかなか収まらなかった。さっき熱を測ったら昨日の夜より下がっていた。まだ少し身体がだるい。
三日間、ほとんど何もせずにベッドの上にいたせいで、起き上がるにも一苦労だった。
「……」
近くにあった鞄を拾って、中から携帯電話を取り出す。滅多に鳴らない携帯には、一件だけ、メールが来ていた。

「……っ、……」

「やりたくなったら連絡するから教えて」と、初めて身体を繋げた日に半ば強引に交換させられた連絡先。本当はもっとほかのことでメールしたり、電話したりしたかった。だけど、受信ボックスに残るのは悲しい内容のメールばかりだった。

『調子、どう?大丈夫?ごめんね』

伊澤からだった。
こんなメール、初めてもらった。

「…っ、う、…っ…」

どうしたって諦められない。
やっぱり嫌いになんてなれない。
こんなふうにときどきやさしくされるから、また好きになってしまう。
携帯電話を握りしめたまま、涙が止まらなかった。



「宮田もう大丈夫なのかー?」
「うん、なんとか」

次の日、ようやく熱がひいて、登校したらクラスの友人が声をかけてくれた。
笑って返すと、まだ少し声が出にくくて「無理すんなよ」とまた心配された。

その日は朝から放課後まで、伊澤とは何も話さなかった。教室にはいたけど、おれのもとに来てくれることはなかった。おれから声をかける勇気もなくて、結局、一言も会話しなかった。
今日学校に行ったらいつも通り、また「おれの家においで」と誘われるんだろうと勝手に思っていた。ほぼ毎日そうだったから。でも、今日はそばに来ることすらなかった。
「……」
伊澤はおれから離れた場所で、ほかのクラスメイトと楽しそうに話している。
昨日見た、あのメールには「ごめんね」と書かれてあった。どういう意味なのか、何に対してのことなのかよくわからない。もしかすると、もうおれとは一緒にいられないってことなのか。

(もう、飽きたのかなあ……)

あんな乱暴なことはされなくて済むかもしれない。喜べばいいのに、気分は滅入る一方だった。

 

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