まだ好きなのかと聞かれた。

頷いて、好きだと言ったら、まるで珍しいものを見るみたいな顔をされた。
だけど、冗談なんかじゃない。全部、ほんとうだった。
熱で頭のなかはもうろうとしていたけど、それだけはわかる。

毎日、どれだけひどいことをされても我慢した。泣いたらもう喋らないと忠告されていたけど、それは守れなかった。
だから、極力おとなしくしていようと努力した。ときどき痛くて、どうしようもなくて声を上げたこともある。
はじめこそ何度か殴られたけど、最近はもう無駄だと思われたのか、無言のままで、行為を繰り返された。

嫌いになりたかった。
嫌いになれたら、きっと、楽になれるんだろうといつも思う。
あとどれぐらいこんなことが続くのか。
怖くて、悔しくて、とても悲しい。
だけど、心のなかは毎日毎日、ただひとりのことでいっぱいだった。
あともうすこし我慢すればまた、前みたいにやさしいあいつが戻ってくるかもしれない。
わずかな期待をして、毎日耐えた。
自分でも、なんて馬鹿なんだろうと思う。きっと、こんな自分のことを影で嗤っているんだろう。

嫌いになりたい。
でも、一度好きになった相手のことを心の底から嫌いになる方法が、おれには思いつかなかった。



熱はなかなか引かなくて、グラウンドで倒れた日から三日経った今日も、学校を休んだ。
こんなに寝込んだのはいつぶりかな、とベッドの上でうなされながら考えていた。

三日前、自宅まで送り届けてくれたのは、「背が高くてかっこいい男の子だったわよ」と母親が言った。
ほとんど記憶になかった。

保健室から、いつもの部屋に連れていかれたところまではなんとなく覚えている。
きっと、またするんだろうなと思ってついていった。今日はやめてほしいと言ったけど、聞き入れてくれるわけもない。
だけど、あいつが「何もしないよ」と言った通り、本当に何もなかった。
いつものベッドに転がされて、いよいよされると身構えたけど、おれに布団を被せて額に触れたりした。ただそれだけだった。服を破かれることもなくて、痛いこともされなかった。
何を考えているのかまったくわからない表情で、おれを見下ろしていた。
このまま、やさしかったあいつに戻ったらいいのになあとぼんやりと考えながら、いつの間にか眠りに落ちていた。

 

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