どうしてだか、離れる気がしなくて、おれの家に宮田を連れてきた。
顔色がひどく悪くて、宮田をベッドに寝かせてやる。
涙で濡れたままの目で、宮田がおれを見上げる。毎日のように泣かせているせいか、目の周りは赤く腫れていた。
「……」
「寒くない?」
「…、」
弱々しく首だけを動かして頷いた。
そっと宮田の額に触れる。自分の手よりも幾分か体温が高く感じられた。
宮田は、ここに来るまでも、来てからもまだ一度も口を開いていない。黙っておれのなすがままになっていた。きっと、このままいつもみたいに乱暴したとしても、何も言わないのだろう。
「…、……」
仰向けに寝転がったまま、おれを眺めるその目からはまた涙が流れていた。



「……宮田、まだおれのこと好きなの?」

なぜいま、こんなことを聞いたのか、自分でもわからなかった。

「……うん…」

弱々しいのに、やけにはっきりと。
すき、と呟くその声は小さかったけれど、確かに聞き取れた。


おれは宮田から、好かれるようなことなんて何もしていない。
むしろ嫌われてもおかしくないことしか、してこなかった。面白半分で近づいて、一方的に身体を開かせて。そのうえ毎回泣かせている。そんな相手のことをまだ好きだという。おれには宮田の気持ちがまったく理解できなかった。
「だいたい、おれのどこがよかったの」
「……」
大抵の女はきっと、おれの顔しか見ていない。男から好かれる想定なんてしていなかったが、こいつもそうかもしれないな、と冷めた気持ちで考えた。
「……」
何も答えない宮田を、じっと眺める。
しばらく沈黙が続いたあと、いつものように宮田の、か細い声が耳に届いた。

「…や、やさしかったから……」
「?」
「伊澤、が……、やさしくしてくれたから、だから…」


優しいって。
だれが、だれに対して。

意味がわからない。宮田が何を言ってるのか。それに、おれは一度だって、宮田に優しく接した記憶なんてない。
宮田はまっすぐにおれだけを見つめる。相変わらず、目には涙が溜まったままだった。
聞きたいことはいくつも浮かぶ。宮田が苦しそうにしていたせいで、それ以上は何も聞けずに、黙ってベッドから離れた。

 

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