もう何も答えられなかった。
あんな痛いこと、絶対されたくない。
嫌だ、やめろ、と言いたいのに、口がぴくりとも動かなくて声も出せない。
精液で汚された顔のまま、おれはまた泣いた。
「う、……っ、ぅ…」
次泣いたら、また犯すって言われた。
怖いけど、もうどうしようもない。
我慢するしかない。
伊澤がこんなに恐ろしいやつだったなんて、知らなかった。
「うっ……っ、っうぅ…っ!」
「……」
ギシッと音を立てて、ベッドにまた押し倒される。恐怖はさらに増していく。上手く呼吸ができなかった。
「……っ、いざわ……」
優しくてかっこいい王子様の、あの伊澤がいない。
おれの好きだった伊澤は、どこにいったんだろう。悲しい。痛い。怖い。

「好きな人の言うことはちゃんと聞かなきゃな。宮田」

最後に聞こえたのは、悪魔のような囁きだった。



あれからどうやって家まで帰ったのか、思い出そうとしたけど、無理だった。気がついたら、家にいて、自分の部屋のベッドに横たわっていた。
身体がだるくて、全身が痛くて動けない。夢かなと思いたかったけど、この痛みがおれに現実を突きつけてくる。
「……っ」
言うこと聞けない子にはお仕置きだ、と伊澤はまた強引におれの中に入ってきた。痛くて泣いたら、ひときわ強く殴られた。結局、伊澤が達するまで解放してもらえなかった。
伊澤があんなやつだって、知っていたらきっとおれは好きになんてならなかった。

だけど、やさしい伊澤を知っている。
告白した次の日は、一緒にお昼を食べようと誘ってくれた。普段は教室でひとりで食べることが多いから、食堂なんてめったに行かなかった。
それを伊澤に言うと、「じゃあこれからは毎日一緒に来ようよ」と笑った。嬉しくて、でも照れくさくて、うつむいて「うん」としか返せなかった。本当は毎日伊澤から声をかけてくれるだけでも、飛び上がりそうなほど嬉しかった。
「……っ、う…」
あの伊澤とは、もう会えないんだろうか。どれが本当のあいつなんだろう。何で、こんなことになったのか。
泣きすぎて頭痛がして、何も考えられなくなった。目をつぶったら、急に眠気が襲ってきて、そのまま死んだように寝入っていた。


 

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