教室にいるときの伊澤は、こんなじゃない。

いつも優しい笑顔で、みんなに好かれていて、地味で目立たないおれにも優しくしてくれて。そんな伊澤のことを、ひそかにおれは王子様みたいだなあと思ったりしていた。だから、伊澤がおれの恋人になってくれるとわかった日は、にわかに信じられなかったけど、すごく嬉しかった。
男のおれから好きだと言われても顔色ひとつ変えずに、受け入れてくれた。本当にこいつは優しいやつだな、とまた惚れ直したりした。なのに。

なのに、だ。

「こら、力抜けって言ってんじゃん」
「う、あっあう、……っ、」
どんなふうに身体の力を抜けばいいのかまったくわからなかった。痛みに耐えているあいだにも伊澤は、ずんずんとおれの中に入ってくる。たぶんもう半分ぐらい埋められていそうな感じがする。
「あーもう」
「は、っ、いっあぁあ!」
伊澤がだるそうな声とともにため息をつくと、さらに奥をめがけて腰を押し付けられた。
痛い。ものすごく。
こんなの、恋人同士ですることじゃない。
だいたい、手だってまだつないでない。キスもしてない。抱きしめてもらってもない。「家においで」と誘われたから、これが俗にいうお家デートってやつか!と内心浮かれていたのに。まさかいきなりベッドに転がされるなんて、想像もしてなかった。

「や、……いやだ、っいざわ…」
痛い、と小さくつぶやいたら、また伊澤がめんどくさそうな顔をした。
「じゃあやめる?」
「え……」
おれの顔をじっと見て、聞いてくる。やっといつもの伊澤に戻ったのかな、と少しときめいたおれが馬鹿だった。

「まあいまやめたら、お前とはもう喋んないけど」
「……」

ひどいやつだ。信じられない。
こんな痛いことしておいて、やめたら喋ってくれなくなるなんて。
こいつが王子様みたいだなんて、どうして思ったんだ。

「うっ……」
さっきから我慢していたが、ついに堪えきれなくなって、嗚咽を漏らした。
痛いうえに、ひどいことばかり言う。
こんな伊澤、おれは好きじゃない。
「うっ、う……」
「はあ……」
伊澤が大きなため息を零す。
「泣かないでよ、宮田」と頭を撫でられた。泣かせるようなことしたのはだれだよと反論するだけの気力はなかった。


「じゃあ、今日は抜いてあげるからさ、」
「…っ、あ!」
言うや否や、ずる、と中から硬くなった性器が抜かれた。皮膚の擦れる感覚がして、また痛みが身体中に走った。
ぐったりとベッドに転がるおれの腕を強く掴むと、そのまま上半身を起こされた。
「舐めるぐらいならできるよね」
「え、…っ…」



 

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