「たさき…っ…」
「……」
おれの顔をみて、名前を呼んでくる。
いまにも泣きそうな声で。
近くでみると、やっぱり目が腫れていた。
「…ううっ、も、もう会ってくれないかと思ったっ……うわあぁっ!」
「お、おいっ!」
廊下のど真ん中で、人目も憚らず倉科が大声で泣き出した。ほかの生徒がなにあれ、と興味深々で見てくる。
おい、これじゃあまるでおれがいじめてるみたいじゃないか!

「こら、そんな泣いてんじゃねえ!」
「うっうっ、うぅう…っ」
鼻水を垂らす勢いで泣いている。場所を移した方が良さそうだ。とりあえず、泣きじゃくる倉科を引き連れて、屋上に避難した。授業開始のチャイムが鳴ったが、今日はサボるしかなさそうだった。



「うっ、ううっ、ひ…うぅえっ…」
「……」
ガキだガキだとは思っていたが、泣き方まで小学生そのものだった。
もっと、こう、慎ましい泣き方ができないのか。悪かったと謝る気が削がれていく。
「おい…、…!」
いつまで泣くんだと言おうとして、倉科がいきなりおれの胸に飛び込んできた。何だこの状況は。
「田崎っ、お、おれのこと嫌いにならないで…っ!」
「……」
「いままでわがままいっぱい言ってごめん…っ、も、もう言わないからっ、ううっ、う、む、無視したり、しないで…っう、うぁああん!」
「……」
泣いているわりにはよくしゃべるな、と冷静にその様子を眺めていた。でも、よく聞くと何気にかわいいことを言っている。こいつが自分から謝ることなんてまずなかったのに。
わがままというよりは、ただの暴言が多かった気がするが。
「ああわかった、わかったからもう泣くな。おれも、こないだは無視して悪かった」
「….う、っうう」
「おまえのことは嫌いじゃない」
「ほ、ほんとに?」
「ああ」
「ううぅっ、」
よかったよう、とおれの胸のなかでわあわあと泣きわめく。まさか、この友人とこんな展開になるなんて、だれが想像しただろう。
「田崎っ」
「……」
うっとうしいし、こんなやつどうでもよかったのに。
泣いている顔をみると、さっきまで小学生にしか見えなかったのに、その顔がいつのまにか無性にかわいく移っていた。



 

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