とりあえずペット。



「いやだ!」と叫んで暴れるので、可哀想だと思いつつ、渾身の顔面パンチ。
うずくまる瀬戸。やっぱり気の毒。でもこれはしつけだから仕方ないんだよ。瀬戸がおれの言うこと、ちゃんと聞かないから。

「…っう、…」
「あーあー、また鼻血出ちゃったねえ。ごめんね?」

ほらティッシュ、と差し出してあげたのに、瀬戸はおれを恨めしそうに見て無視をした。

「ていうかさあ。瀬戸って学習能力ないよね。もうそろそろ暴れるのやめなよ」

昨日買ってきた首輪を指でぐるぐる回しつつ、瀬戸の腹を軽く蹴る。
うずくまってた瀬戸が「う、」とまた小さく呻く。その様子を真横に立って見下ろしているおれ。
ものすごく優位な立場にいる気分。いや、実際いまはその立場にある。対瀬戸限定だけど。それでもおれにとっては、充分すぎる権力だ。




キスでメロメロにさせた夜は、それ以上手を出さなかった。
何も食べていなかった瀬戸に、飯を与えてついでに風呂まで入らせてあげた。
「ちゃんとお尻の穴まで綺麗にした?」と冗談をかましたところ、無言。
風呂上がり、くしゃみをして、すこし寒そうに丸まっていたから、服を貸してあげることにした。逃げられないとわかっても、おれに近づくのは相当嫌らしく、部屋の隅っこで膝を抱えた。
「寝るよ」とベッドに誘ったが、「おまえなんかと寝るくらいならここでいい」と拒否された。あんまりかわいくなかったので、髪を引っ掴んで連れていき、無理やり一緒に寝た。瀬戸は当然のように、おれに背中を向けて、ベッドの端ぎりぎりのところで眠った。
おれが寝返りを打つたびに、かすかにその肩が揺れるのが見えて、楽しくなった。

明日は何をして、怯えさせてやろうか。心を踊らせながら、眠りについた。



相変わらず起きるのが遅く、今日も目が覚めたのは昼の2時。
すでに隣には人影がなかった。
ついに逃げられたかと焦ってベッドから飛び出したが、それは杞憂に終わった。
昨日と同じ場所、リビングの隅に丸まった瀬戸がいた。おれを発見するなり、さらに縮こまって、存在感を消そうと努力している。

(なにあれ。めちゃくちゃかわいいんだけど)

それを眺めて、密かに悶えるおれ。
同性相手にこんなに欲情できる素質があったとは。まあ、悪くはない。

「おはよう瀬戸。昨日はよく眠れた?」
「……」

視線が合うように瀬戸の前にしゃがみ込む。うつむいたままおれの顔は見ようとしない。

「腹減ってない?なんか食べる?」
「……」

なんとか瀬戸の顔を見たくて、下から覗き込んでもやっぱり避けられる。
ついでに返事もない。どうしたもんか、と頭を悩ませる。
しばらく経って「おまえの顔みたら、食欲なくなった」と瀬戸のつぶやく声がした。おれのスイッチは、オンに切り替わる。


そして、おれと瀬戸、怒涛の攻防戦が始まった(ただしおれが圧倒的に有利)。




床に這いつくばる瀬戸。
今日の目標は「瀬戸ペット化計画」。
どうにかして、この首輪をつけて、瀬戸に「にゃん!」か「わん!」と言わせたい。いや、瀬戸は野良猫っぽいから、やっぱり「にゃん…っ」だな。
そのための必須アイテムを手に、瀬戸に近づいたら相変わらず逃げようとして、暴れ始めた(それが冒頭の、事の発端である)。

「ほら、瀬戸、これつけてさ、『にゃん!』って言ってみてよ。ね?絶対かわいいから」
「っ、死ね変態っ、きもいんだよ!」
「ああもう……」

ドスッ、と蹴り上げる音とともに聞こえる呻き声。瀬戸は、蹴られた腹を押さえて苦しげに息をする。
なかなかうまくいかないものだ。ここに連れてきてからまだ丸三日。さすがにいきなり「ペット」はきついか。

「だからそんな口の利き方しちゃだめって言っただろ。あと何発蹴ったら言うこと聞くかなあ?」
「…うっ、ぐぁ、っ」

まるでサンドバックみたいにされる瀬戸。暴力を振るいながら他人事のように、見下ろすおれ。

それからしばらくして、瀬戸が気を失って、おとなしくなっているあいだに、ちゃっかり首輪を装着。白い肌によく映える真っ赤な首輪。うん、やっぱり似合ってる。鈴とか付いててさらに可愛さ倍増。これだけで軽く勃起する。
今度はリードも着けて、散歩とかどうだろう。かなりハードル高そうだけど。

名前を呼びながら、ぱちぱちと頬を叩き、起こす。
うっすらと開いた目。これから何が起こるかすぐにわかったらしく、あっという間に、その目の奥に焦りと怯えがうかがえる。

「今日は思いっきり気持ちよくしてあげるよ。瀬戸が『にゃん!』って啼くまでね」

貸した服を乱暴に破いて、全裸の瀬戸のできあがり。
おれの服だけど、一着くらいだめになったところでまったく支障はない。
まだまだ暴れようとするから、買ってきた手錠をさっそく活用。足は……もう面倒なのでそのまま放置(拘束したところで、どうせ突っ込むときにヤりにくくて外すことになる)。
「いっ、…いやだっ、やめろ!外せよこれっ」
胸の前でかけられた手錠が、がちゃんがちゃんと鳴る。どうやっても外れないそれを必死こいて、外そうとする。健気だよなあ。ほんとに。
「うーん、瀬戸がおとなしくしてくれたら考える」
「て、めえ、っ!ぅ、うぁっ…」
何の前触れもなく、瀬戸の下半身にローションをぶっかける。冷たかったのか、ひきつった声をあげた。押さえ込んだ大腿がびくびくと震えはじめる。
肌に塗りつけるように広げてやる。敏感な部分を掠めたとき、「ひあっ、」とひときわいやらしい声がして、おれの興奮も最高潮。
「瀬戸って、なんだかんだでこういうの好きだろ?」
「…っ、う、やめ…っ!」
「はじめてやったときも、何気に勃ってたもんね」
「!」
首筋にキスを落としながら、そう言ったら、さっきまでの生意気な表情を一変させた。

「あれ?もしかして自分で気づいてなかったの?」

やめろとか、変態野郎とか言いながらもあの日、瀬戸はたしかに勃起していた。
絶頂こそしなかったものの、尻を刺激されて感じてしまっていたんだろう。
おれはそれをあの日はあえて、見て見ぬふりをした。なぜならこうして、後出しでからかってやろう!と決めていたからだ。作戦は見事成功。なんたっていま、瀬戸は、この世の終わりみたいな顔してる。あともう一言でもとどめをさせば、またかわいく泣いてくれるかもしれない。

「……」

あの威勢はどこへやら。すっかり元気をなくしてしまった瀬戸。この隙にいろいろ致そうと思う。

「……、っ、あ、!」

力の抜けた両足を抱えて、大きく開かせる。そのまま瀬戸の顔面近くまで折り曲げる体勢にさせた。これで、恥ずかしい部分は全部丸見えだ。
薄いピンク色のローションで汚れた性器に、尻穴。塗り広げて、そのまま、中指を窄まりにちゅぷっと挿入。

「や!やめ…っ、いやだ…っ」
「はいはい、じっとしてないと、お尻までケガするよー」
「…うっ、…あ、あ…っ…」

指を回転させつつ、徐々に奥へ奥へと進めていく。一本で余裕ができてきたころ、指を二本に増やし、さらに刺激を強める。
ローションのぬめりのおかげで、狭かった穴は、順調に緩んでくれている。瀬戸はというと。

「や、ぁ、…っう、ぅ、…いや、だ…っあ、ぅく、っう…っ」

過ぎる快感のせいか、恐怖からか、おれへの暴言を吐くことも忘れて、号泣しはじめた。あまりにもかわいくて、いますぐぶち込んでやりたくなったが、ここはぐっと我慢。
「瀬戸のケツ穴、ぐちゅぐちゅ言ってて超やらしいよ。気持ちいい?」
「…っ……、ぅ、…」
「答えないつもりなら、一気に四本指ぶち込むけど、いい?」
「っ!」
中を掻き回してから、ずるっと引き抜いて、指全体でひくつく尻穴を撫でる。
黙り込んだ瀬戸を急かすように、穴をトントンとノックしてやる。

「あと五秒ねー、四、三、……」
「う…、っ…もち…い…っ」

薄情なカウントに慌てた瀬戸が、蚊の鳴くような声で言った。

「もっと大きい声で言えよ」
「……っ、…う、ぅ…っ」
「はあ?何、聞こえない」
「っ、」

嗚咽に喉を鳴らして、喋られなくなってもまだ追い詰める。顎を掴み上げて「もう一回」と脅す。自分がこんな、ひどいことを平気でできるやつだなんて、いままで知らなかった。


「……き、気持ち、いい……」

おれたち以外だれもいない静かな部屋のなかで、瀬戸が白状した。
どこが気持ちいいのか聞くと、「お尻が、」と小さいけどはっきりした声で答えてくれた。

「へえ、瀬戸はケツ穴が感じちゃう淫乱だったのかあ!」

そうかそうかと、頷いて、抜いていた指を再度突き入れる。ちゃんと言うこと聞いたので、四本は勘弁してやって、今度は二本を一気に入れた。

「あっ、あ…!う、や……っ」
「どこらへんが気持ちいいの?奥?」
「……っ、ん、…っ」

真っ赤に顔を染めて、小さく頭を揺らす。それは肯定を意味する。
どうやら奥が感じるらしい。ならばもっと狂わせてやろうと意気込んで、高速ピストンを開始。ローションがぐちゅぐちゅと、やかましいほどに響く。

「や…っ、あぁっ、あ…っう、!も、やめ…っ…やあぁ…っ!」

もう限界っ!という感じで、感極まった
喘ぎ声を出す。瀬戸の小ぶりな性器から、どぴゅっと白い飛沫が吹き上げる。いやらしい体勢のままで、瀬戸は、自分の精液で、顔を汚した。

「……は、…ぅ……っ」

そういえば、おれはまだ瀬戸のモノに一度も触れてない。
こいつ、さっそくトコロテンかよ!となぜか感心。イってしばらく放心状態だったが、意識が正常に戻ると、瀬戸はまたぐずぐずと泣き出した。

「…っ、く、ぅ、うっ、…っっ」

手錠に首輪、全裸でドロドロ。
こんな格好で泣かれたら、もう止まらなくなって当然だ。
苦しい体勢から解放してやる。腰だけ降ろして、足は開かせたまま。いまからが正真正銘の本番。

「もう泣き止んでよ瀬戸、ほら、いまからもっと気持ちいいことしてあげるから」
「…っや、……」

もうはち切れんばかりに勃起したおれの性器を、ぬるぬるの尻穴に押し当てる。
その熱を感じて、瀬戸が震えた声で泣く。ほんとうに聞き取れるかどうかの声量で「やめて」と聞こえて、身悶えしそうになった。
「やめろ!」じゃなくて「やめて…」って。なにその萌えワード。瀬戸の口からそんな言葉が聞けるなんて。おれ、超ラッキー。もう明日死ぬかも。

「瀬戸、ほんとかわいい……大好きだよ」

ちゅ、と頬に軽いキス。
強張る身体から、ほんの少し力が抜けたところを見計らって、ずぼっ!と一気に挿入してやった。

「……っっ!!は、あ…っ!」
「っ、ん、あー、やっばい、超締まる……」

突然の圧迫感に、声も出せない様子だった。口を半開きにさせて、びくびくと、全身を震わせる。
おとといも、大概すごい名器だなあと感激したが、今日はきっちり慣らしてやったおかげが、すごいうねり具合だった。
それに熱い。瀬戸の身体のなかの熱が全部、伝わってくる。
ここまで来ればもう自制心なんて跡形もなく消えて、ただ発情した獣のように腰を振りたくる。ぱんっぱんっ、と肌のぶつかる音と、粘着質な水音。
瀬戸のナカはまるで、女のそれのように、濡れていた。

「瀬戸っ、どう?気持ちいい?指よりコッチのが好きでしょ」
「は、ぁっ!あ、っあぅ…っ、う、!」
「ちゃんと言ってよ、『ケツ穴、チンポで犯されるの大好きです』って」
「…や、やぁあ…っ…」

とんでもない要求に、頭を振り乱して抵抗する。まだ意志は保たれているらしい。でも、相変わらず学習能力ゼロだな。こいつは。
拒否する姿はやっぱり見たくないので、ビンタを喰らわせる。
「っ、く、…あ……」
「殴られて気失うのと、犯されて失神するのどっちがいい?」
「う、ぅう…っ、…!」
「これ以上ぶん殴られたくなかったら、正直に言いな」

最初から最後まで、脅しに脅して、瀬戸はついに認めてしまった。


「……っ、お、お尻、犯されっ、て……きもち、いです…犯されるの、すき…っう、ぁ、…っっう…く…うぅ…」


鼻水まで垂らして泣いて。
まさかこんなことが自分の身に起こるなんて、きっと想像もしてなかっただろう。ほんとうにどこまでも不憫で、可哀想な瀬戸。


「じゃあこれから毎日、だいすきなこといっぱいしてあげるよ。瀬戸、嬉しい?」
「…っ、…っう、ああっ…ぁ」

身体を激しく揺らすたびに、漏れる艶っぽい声。快感に抗えない証拠。
泣きながら、喘ぎながら、瀬戸は、おれにたっぷり中出しされて、絶頂した。


ああ、そうだ。
「にゃんっ」って言わせるの、忘れてた。


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