やめた方が良いって、言われた。そこに幸せは無いから。俺と一緒にいたって不幸になるだけだから、と。唐突な発言に理解が追い付かない。けれども咀嚼、反芻。簡単な言葉を難しく考える。噛み砕いて、繰り返し。ふられたのか、俺は。まだ告白も何もしていない目の前の想い人に。
 
「それもお得意の才気なん?」
「……うん」
 
顔色一つ変えないで俺が問えば、悲しそうに彼は笑って頷いた。別に今さら思いの伝達の明瞭さは求めていない。時には言葉にしない方が伝わることだってあるものだ。でも、それなら、なおさら。生まれた言葉と行動の矛盾に、困惑する。
 
「白石は、俺ば、好いてくれとう」
「おん、せやな」
「俺も、好いとうよ」
「それやったら良かったとちゃうの」
「ばってん、違う」
 
俺の白石への好きは白石の俺への好きとは違う、から。そう言って彼はまた悲しげに笑うのだ。だから、駄目だって。俺のことはやめてって。そんな言葉の数々には涙よりもため息が漏れた。なんやそれって。
 
好きな人と共にあるならそれは、幸福。そんな女々しいことを思うわけではないけれど、思わないわけでもないけれど。頭ごなしの否定には、納得なんていかなかった。だって、納得出来る要素なんて、無いのだ。言い寄る女の子たちは邪険にしないで、言い寄りもしていない男の俺には最初から予防線を張る。そんな、差別、区別。特別扱い。
 
「確かに一緒の未来は不幸かもしれへんよ。でも、一人の未来も不幸やって思わんの。」
 
俺が問いただすように口にした言葉には、彼は否定も肯定もしないで曖昧な表情のまま。でも、きっと、涙。見えるはそんな、未来。繰り返される言葉は、一体誰の為の言葉か。言い聞かせるみたいに、何度も何度も。彼は、彼と共にあっては俺が不幸になると言う。俺では幸せに出来ない、俺は最低だから、って。そう言って拒絶する。でも、知らないやろ。共にない未来も、俺には不幸だってこと。分かって無いから、そう言えるんやろ。
 
表情、行動、滲み出る感情。本当に嫌いなら突き放せば良いのに。それが出来ない程度には彼だって俺が好きなのに。俺がお前を好きだって、どうしようもなく好きだって、なんで、気付かないのだろうか。勝手だ。自分勝手にも程がある。自分は不幸になっても良いから、幸せでいて、とか。俺は不幸でも、一緒にいたいのに、なんて。今度こそ、零れるものは涙だ。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
千歳は自分と居たら白石は幸せになれないって思ってて、白石は確かにそうだけど千歳と一緒じゃなきゃ幸せは有り得ないって思ってる。
 
100630




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