「もっと、盲目的に愛してるのかと思った」
 
 
なんとなく、帰り道。一緒に帰る理由なんてものは無かったけれど、一緒に帰らない理由なんてものも無かったから。部室から共に歩いた。そういえば久しぶりだな、昔よりも二人では帰らなくなったよな。なんてことを考えるけれど、そんなことは別にどうだって良かったから口にはしない。代わりに彼と彼の話をしたのも、別に特別な理由は無かった。
 
「珍しいね」
「それはそっちの話だろ」
「うん、まあ、でもそんなこともないよ」
 
俺の言葉に彼はちょっとだけ驚いた風にして、それから、困ったみたいに笑った。もっとどうしようもなく、馬鹿みたいにだって、そう思っていたのに。そんな顔もするんだな、そう思って冒頭。
 
「……あんなに綺麗なものを見ないなんて、勿体無いでしょ」
 
でも、自慢気に笑うそれは、確かにそれだったから。自虐を孕むそれは、どうあがいてもそうだったから。俺の想像は、案外現実だ。
 
 
でも、たまに目は瞑りたくなる。
きれいでまぶしくて、俺なんかが好きになっちゃいけない人なんだなって。
 
痛感、するんだ。
 
 
聞いてなんていないのに、淡々と紡がれる言葉。そこには今すぐにでも泣き出しそうな色が見えるのに、瞳は対称的なまでに渇いていたから。なんとなくだけど、そういうのは気に入らなくって。腹立たしくって。手招きで縮めた距離で、眉間に、デコピン。でも痛いって悲鳴は、無視する。無視して、今度は口を開くのは俺の方だった。
 
「中途半端なことしてんじゃねーよ」
 
助言とかそんなつもりは微塵もなくて、ただ単純にそう思ったからそう口にした。けれどもそれでも、彼は救われたみたいな顔をするからそれに悪い気はしない。ぼろぼろ、ぼろぼろ。面倒臭いけど、胡散臭い笑いよりはよっぽど良いなって思う。彼らしさなんて知らないけど、きっとよっぽどお前らしい。なんて。甘いのかもしれない。きっと、甘いのだろう。そうは思うけれど、見えないから。見えないなら。手を引くぐらいはしてやっても良いだろう、なんて自己完結をする。きっと、案外俺は彼等を嫌いじゃないんだ。
 
 
(多分、俺も、大概)
 
 
 
 
 
 
 
で君を見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
意味は違えどそれぞれがそれぞれをそれなりに特別視。
 
120616




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