きっと、ぜったい、俺が彼に抱く感情は好意だった。それはどうしようもない事実である。しかしそれに気付いた瞬間から、どんどん、どんどん。自分を嫌悪する。自分が嫌で嫌でたまらなくなる。彼と言う人間を好きになるのと同時に、自分と言う人間を嫌いになったのだ。
 
 
「最近なんかあった?」
「ん、なんで」
 
呼び止められたから振り返れば、思い付いたように岳人は俺に問う。しかし唐突過ぎる質問にその真意が理解出来ず、俺はまた質問で返した。そうすれば彼は考えるように小さく唸る。別に何がって訳じゃねーけど。なんて必死に言葉を探して、繋ぐ。
 
「なんとなくだけどさ、はっきりしねえなって!」
 
そんな言葉に、はっきりしねえのはどっちだよ、なんて満面の笑みを浮かべたままの彼をど突いた。しかし内心はどきり。鈍い奴だと思っていたのにやはり付き合いが長いぶん分かってしまうものなのか。それとも俺が相当分かり易い奴なのか。考えた。その答えは分からなかったけれど、願うは前者。せめて、の話。
 
いってえなあ、なんて文句を言いながらもお互い笑い合う。昔から変わらない。彼とはそんな、関係なのだ。しかし不意に彼が出した名前に俺は思わず再びどきり。表には出さないように精一杯努めたけれど。だって長太郎、って。彼こそが全ての原因なのに。
 
 
長太郎が一緒に帰るからって、探してたぜ。
 
 
それは俺から見たって、多分端から見たって、なんでもない日常だ。だから頷けば、彼は手を振りそれで去る。気にすることではないことは、分かっている。でも、どうしても、彼だけは駄目。嫌。会いたくない、けど、会いたい。とか。
 
「宍戸さん!」
「ごめん、岳人とちょっと話してた」
「いえ、俺が勝手に待ってたんですから気にしないで下さい」
 
後ろ姿を見つけて呼び止めれば、満面の笑みを持って彼は答える。だから、思わず釣られて笑顔になる、けれども。はっきりしなくて。わずらわしくて。二者択一の答えも選べない自分の存在が、嫌で嫌でたまらないのだ。好きか嫌いか、それは明白なのに。その続きの選択は、ずっと、躊躇。でも、でも、続くならずっとって。叶うなら永遠って。ならない未来を願い続けるほどには俺は彼を、
 
 
「好きなんだよなあ」
 
 
 
って。そればっかり。
 
 
 
 
 
 
 
三択×問題
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
うだうだしながらうだうだしてる自分が嫌な宍戸さんのお話でしたが文もうだうだに。
 
120313




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