不意に後ろから抱き付いてみたら、気持ち悪いと一蹴された。まあ、当然やんな。俺だってそう思う。でもやっばりどきどきなんて微塵も感じないから、そこには恋愛感情なんてものは存在していないんだと言うことを確認して、消沈。
 
「俺さ、侑士のこと、好きやで」
「そらおおきに。でもこの状況だと別の意味に聞こえるで?」
「おん、そう聞こえんかなって」
 
抱き付いたままそう繋げば、珍しく彼からは動揺を感じられた。けれども、違った。残念ながらそうはならんかった。そうやって言えば、溜め息と共に差し出されたティッシュケース。初めは彼のその行動の意味を理解することが出来なかった。けれどもこぼれ落ちる雫に、指摘された涙に、今度は俺が動揺する。なんで。
 
「なんかあったん?」
「いや、別に、なんもない」
「涙ぼろぼろ出しおってよう言うわ」
「せやかて俺にもよう分からんねん」
 
彼の言葉に、自分の涙に、考える。考えるけれど、そこに存在する感情を自分でも上手く処理することは出来なかった。なんとなく、寂しい。どうしても、寂しい。そんな感情がただひたすらに渦巻いて、俺を支配する。
 
恋愛感情って言うのは分かり易いものだと思う。だからいいなって思った。だってご親切にも、そこには愛の文字が存在しているのだ。形は人それぞれに違うかもしれないが、離れたくない理由には充分なるだろう。だから、羨ましい。だから、残念。俺がどれだけ望んだって、俺が彼と共に在る理由はくれない。多分、なんか、そんな感じ。きっと。俺が彼に対して、行かないで。離れないで。なんて言葉を口にすることは出来ない。そんなことを言える立場じゃない。だからどうしようもなくて、どうしようもなさに。
 
「そない涙なのかも、しれへんなあ」
 
掻い摘んで言葉にして、そうやって笑ってやれば、彼は溜め息を吐いた。ほんまあほやな、って。そんなん分かってるわ、って。
 
そんな俺の目元を彼はくしゃくしゃのティッシュで乱暴に拭うから、そんな動作に俺はただ従った。でも、ああ、なんかこれ知っとるって、思って。そうやって手探りで、見つけて。変わらないものの存在を確認すれば溢れるから。彼の手を掴み取り、動きを止める。自分はただあほみたいに笑ってればええんや、なんて。そんな言葉に二人して笑うから、きっとこれからもお互いにどうしようもなくあほな二人でいられるんやないかなって。思えば、少しだけ満たされる心を感じた。
 
 
 
 
 
より大きく
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
曖昧従兄。のっと恋愛感情。
 
120226




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