白石が猫だったなら良かったのに。
 
 
野良にしては綺麗過ぎる毛並みを持った猫を撫でながら、そんなことを思う。すりすり、さらさら。普段からずっと外で暮らしている子ならば、なかなかここまでは人懐っこくはないだろう。それにこんなにも綺麗な白は保てない。だからきっと飼い猫だろうなあと思えば、その考えは正解だったらしい。名を呼ぶ声がすれば走り出す。そしてその声とは違う突然の来訪者に慌て、他の猫たちも逃げ出した。案外臆病もの。
 
「こんなとこで何してるんかなあ?」
「猫さんと遊んでたばい」
「……素直に答えたら良いってもんやないで」
 
俺の返答に呆れた表情を浮かべながら、小さな溜め息。彼の瞳は俺を睨みつけるように捉えるから。綺麗、だなって。こんな彼がもしも猫だったら、なんて。
 
そうしたら狭い部屋で二人切り。一生、一緒。俺は先程の白猫の飼い主のようには、自由を与えないだろう。そんなものは必要無いから。ずっと俺と二人で、ずっと俺だけを見て、俺という人間だけを知っていれば良い。そうやって、望む。小さな猫の姿ならばそれは可能であるから。かいごろし。
 
「白石、にゃーって、鳴いて」
「は?」
「猫みたいに、にゃーって」
「いや、俺人間やで」
 
突然の俺のお願いを彼は聞いてはくれなかった。困ったみたいに、意味が分からないと言うように、眉を寄せて俺を見る。だから、さっきそうしていたみたいに、猫にするみたいに、優しく撫でてやればますます眉間には皺が寄った。けれどもそれは一瞬。少しだけ考えるようにして視線を斜め下に落とした彼は、再び視線を合わせて首を傾ける。
 
「にゃー?」
 
 
白石が猫じゃなくて良かった。
 
 
 
 
 
 
ゃんにんにゃ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
猫の日ですがタイトル詐欺。ちょっとだけ病んでる。
 
120222




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