それは、馬鹿みたいな欲求。なんとなく渦巻いて、なんとなくどうしようもなかった。
 
 
「やーぎゅ、どこ行くんじゃ。」
 
授業はもう終わっていた。殆どの生徒が既に教室を後にしており、残るのは数人だった。同じクラスのブン太はもうとっくに居ない。自分だって本来ならそうだった。残る必要なんて無いのだから、さっさと帰れば良い。しかしなんとなく面倒臭くなってしまい、ぼうっとしていたのだ。でもずっと居るわけにもいかない。だから、廊下を見つめてきっかけ探し。
そんなとき、瞳にとらえたのは見慣れた姿だった。それをきっかけとして、俺はようやく重い腰を上げる。なんて、嘘。本当は待ってた。なんて、嘘。
 
「珍しいですね、仁王君。」
「帰んの面倒になったんじゃ。お前さんは?」
「私はちょっと図書室に用がありまして」
 
そう言う彼の手には何やら本が握られていた。何かはよく分からないけれど、どうせ聞いても分からないから聞かない。だから相槌を打つだけ打って、俺と話すために足を止めていた彼の目的地へと勝手に進む。
仁王君も行くんですか、なんて問いには小さく笑みだけを返した。そうすれば意外だと口にしながらも彼は優しく笑う。ああ、なんて意地の悪い奴じゃ。そんな彼の笑みに思う。けれども彼が知らないふりを続けるつもりならば、俺が揺らすしかなかった。
 
「雅治は比呂士と一緒に居たくて行くんよ。」
 
そう言って、にっこり。俺の言葉で動揺する彼が見たかったのだ。揺らすから、揺れて。そんな願望。ぼうっと、何も言葉を返さない彼に肩をとんっとぶつけてみる。一瞬、ふらり。今度は諦めたみたいに笑って、彼は優しく俺の頭に触れた。だから、少しだけ満たされる感情。
 
 
遮るものになりたい。それがどうしようもない馬鹿みたいな欲求。真っ直ぐ歩こうとする彼を妨げるものになりたかった。
 
 
 
 
 
妨害欲求、うら
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
自分で雅治って言わせてみたかった
 
110424




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