しんしんと雪が降る。今年はまだ始まったばかりだと言うのに、記録的な豪雪らしかった。確かにここ数年間でここまで降ったのは久しぶりだと思う。一面銀世界。しばらくの間、ここまでの雪は見ていない。
 
まだ部活をやっていた現役の頃ならば、きっと練習をする前にこれだけの雪をどうにかしなければならないと言うことへ頭を悩ませていたことだろう。しかし、もう違う。一応は受験生と言う肩書きを背負ってしまった以上、頭を悩ませるべき場所はそこではないのだ。別に今日は学校は休みだし、塾に通う訳ではない俺には交通手段の確保も問題ではなかった。だから本来なら、勉強に頭を悩ませているべきなのだろう。なんて思いながら、今は息抜きと称したサボリ中だけれども。
 
しかしサボリと言っても、余裕の無さからの現実逃避とは違った。余裕は、あるのだ。受験など大して上の学校を狙うわけではない俺には日々の積み重ねで十二分に手が届く範囲のことだった。こんなことを言ったら大半の受験生に怒られそうだけれど。特に謙也とかに。だから、まあ、息抜きって言うか、サボリって言うか、散歩。真っ白な雪の上にさくさくと足跡をつけて歩いた。コンビニで温かいものでも買おうかな、なんて足を止めれば近付く足音。
 
「白石」
 
振り返れば、白の中に黒。こんなところで出会うには意外な人物に驚けば、彼は散歩だと笑った。ここは俺の家の近所だ。彼の住む場所からはそれなりに距離があるはずなのだけれど、掴まれた腕にその疑問は形にならずに終わった。
 
「どうしたん?」
「白石は、たいぎゃ白か。一緒に溶けちゃうんじゃなか」
「阿呆、んなわけあるか」
 
彼が至極真面目な様子でそう言うから、掴まれた腕を払う気は起きなかった。代わりに優しく笑ってみせる。そうすれば、彼もなんとなく笑った。頷いて、笑う。しかしそれで腕は離れるから、思うは、どうしても、そこ。
 
春が来たら居なくなるのはお前の方やろ、って。
 
雪は溶ける。それは時間の問題だ。雪が溶ければ春が来る。それだって時間の問題。そして雪が溶けて春が来れば、別れの季節は訪れるのだ。否応無しに。そして彼が俺の腕を掴もうとも、俺が彼の腕を掴むことは出来ない。それがいま、現実。つまりはそういうことなのだ。俺が頭を悩ませるべきはここでもないはずなのに、いつだって気付けばそのことでいっぱいになる。
 
しんしんと降る雪は視界をも覆う。覆って、しまえば良いのだ。そうして一面に広がる銀世界を、絶やさないで。ずっと、ずっと。一分一秒でも長く、彼と。なんて願望をも隠して。
 
 
 
 
 
しらゆき
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
別れる未来を前提にするから、形に出来ないのでしょう。
 
120201




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