彼はよく部活に姿を現さない。それだけならまだしも、学校にすら姿を現さない日も少なくない。いやむしろ、それが殆どなのだ。だから彼の出欠は生徒たちの間で賭けの対象にもなりうる。そんな存在なのだ。
 
「今日千歳君来てるらしいで」
「チャンスやん、いったれ!」
「ええー、でもお…」
 
昼休み、廊下を歩いていればたまたま聞こえた声に知る。彼は今日は珍しく学校に来ているらしい。四日振りだろうか。なんて思うと同時に、たまに姿を現せばまたこれなのかと溜め息が漏れそうになる。前述した通り、彼が学校に姿を現すのは珍しい。それにも関わらず、この通り案外女生徒からの人気は高いのだ。彼がモテる理由が分からない訳ではない。だって、そんなの俺の方が知ってる。俺だから、知ってる。分からないのは、彼を思う方の気持ちだった。だって、ろくに学校にも来ない彼の何を知ってるん。なんて、本当はそれがただの嫉妬だってことぐらい気付いているのだけれど。
 
 
「来てたんなら声ぐらいかけてくれればええのに」
「白石なら言わんでも来てくれるって知っとーよ」
 
そのままいつもの彼の居場所に向かえば、彼は笑顔で俺を迎えてくれた。だから、安堵と言うか、優越感と言うか。そんな感情が俺を支配する。けれどもそれは隠して、呆れたみたいに笑ってやった。詰まる距離にも、一応は拒否を示してみせる、けれど。本気じゃないから意味はない。でも本気じゃないから意味がある。
 
伸ばした腕の中に彼は俺を入れるから、同じみたいに首に手を伸ばした。笑うから、笑う。さっきの女の子には悪いことをしたかもしれないなんて思うけれど、そんなのは一瞬だ。だって知っててそうしてるのだから。俺にとっての彼女はただの邪魔者でしか無いのだから。一つそれを排除したって、俺には喜ばしいだけなのだ。
 
愛は障害がある方が燃えるとか言うけれど、ただでさえ障害ばかりの愛だ。これ以上なんて、いらない。望んでない。だから、絡めれば、笑う。そうなれって望む。
 
 
「なあ千歳、俺だけを見とって?」
 
 
 
彼には俺以外、いらないのだ。
 
 
 
 
 
 
 
よりも
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ネガティブじゃない白石くんを目指した結果、攻めっぽくなりましたが、一応ちとくらです。
 
120122




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