机に突っ伏している彼を見付けて、思わず手を伸ばした。しかし触れるより先に、顔は上がる。そして何も言わずにじっと俺を見るから、先に折れたのはこちら側だった。へにゃんと笑って見せれば、胡散臭いと笑われる。それだけ、だけど。
 
「珍しいこともあるんやな、寝とった?」
「寝てはない。少し、疲れただけだ」
「どっちにしろこないな跡部、なかなか見れへんよなあ」
 
そう言ってまだ完全には頭を起こしきらない彼に微笑む。そうすれば彼は俺を見たまま繋ぐ。別にお前しかいないんだからいいだろ、なんて。彼が放つその言葉にどれだけの意味があることか。思わず、緩む。そして分かっているのかと問えば、知ってるなんて当然のように答えるから。ああ、やられた。なんて思った俺は片手で口元を覆った。そうすれば、勝ち誇ったみたいに彼は笑うから。それだけ、なのに。
 
「同じくせに」
 
ぼそりと小さく彼が呟いた言葉に、俺は少しだけ首を傾げる。けれども、ああ、そうなのかもしれない。なんて思えば、なんだか、馬鹿みたいだった。彼が俺の前でこんなにも無防備なように、俺も彼のまえではこんなにもみっともない。なんて、馬鹿みたいや。
 
すきとかあいしてるとか、そんな甘い言葉は一つもここにはないのに。どこにもないのに。それなのに、こんなにも甘い。甘い甘い空間。なんて言うのは俺一人の錯覚なのかもしれない、けれど。あまりの甘さに顔は勝手にゆるむ。隠さずにはいられない。幸せ、とか、それだけで充分だった。
 
 
 
 
 
スイート
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
はっきり言わないけれど、な関係な二人。
 
120109




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