晒された白い手が、一番に目に入った。思わず掴み取れば、あまりの冷たさに困惑する。そんな私を彼は笑う。
 
「あっためてくれん?」
 
彼のその言葉に言われるがまま。掴んだ手をそっと包み込めば嬉しそうに笑うから、思わず溜め息が漏れた。寒いのは苦手なはずなのに、どうして。しっかりと着込んでマフラーもして、寒さ対策は万全のはずなのに手だけが無防備な白。だからひどく違和感を覚えて問えば、「柳生があっためてくれるじゃろ」なんて当然みたいに彼は言う。
 
だからまた、小さく溜め息。確かにこの程度の些細な願いなら、殆ど全ての場合で私は彼の言葉を聞いてしまっている。けれど、だからと言ってそれは違う。こんな寒さの中で手だけを晒して、冷え切ったそれは、まるで死人みたいに。私が居ない時はどうするつもりなんですか。なんて自惚れもいいところな言葉を口にするのに、彼は笑うから。ぎゅっと力を込める。
 
「柳生がいなきゃ死んだも同然じゃから、いいんぜよ」
 
なんて、そんなの。眉を寄せる私を前に、彼は満足そうに笑うから。どうすることも出来なくて、ただただ手に力を込めた。馬鹿みたいな話、だけれども。それが彼の幸せそうな笑みを作るなら、別に良いのかもしれない。そんな建て前。
 
段々と手は温度を共有し始めて、そのせいか彼の頬もほんのりと赤く変わるから。それにはちょっとだけ笑った。安心した、みたいに。でも本当は、私なしじゃ生きれなくなってしまえば良いんですよ。なんて、そんなの。ぐっと飲み込む本音。
 
 
 
 
 
白の手
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
お互いにお互いへ依存してる二人。
 
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