果たされないと分かっている約束を信じ続けられるほどに俺は子どもでは無かったし、所詮約束なんてそんなものだと割り切れるほどに俺は大人でも無かった。ああ、中途半端で、面倒くさい奴。そんなことは自分が一番分かってはいたけれど、まだ縋らせて欲しい。優しく、甘やかしていて欲しかった。そんなことを同い年の男に思う俺は、本当に駄目な奴。
 
「なんでお前やったのかな」
 
聞こえなくて良いと思った。だから、小さな小さな声だった。しかし案外そういうときの声の方が、相手には伝わってしまうものである。彼は、千歳は、足元で戯れる猫に送っていた視線を俺へと移した。そしてじっと見つめてそのまま。そらさない視線に俺は諦めて言葉を繋ぐ。諦めた言葉を繋いだ。
 
「ひとりになんて、なりたくあらへんのに」
 
それでも詳しくは語らないけれど、きっとこれだけでも彼には伝わるだろうなんて思った。彼は普段見せている姿よりも、ずっとずっと鋭くて、ずっとずっと酷い。それが、本当だから。言葉にはしてみたけれど続きは聞きたくも無いから、今度は俺の視線が猫へと移る。しゃがみ込んで手を伸ばせば、ごろごろと喉を鳴らしてすり寄った。けれど、そんなのは当然続かなくて、猫はすぐに背を向け姿を消した。おんなじ、なんやろか。なんて見えないはずの背中をぼうっと追っていれば、突然俺の視界には彼が入る。
 
「……なんのつもりや」
「ひとりになんてしなか」
「だから?」
「約束。」
 
俺の前でおんなじようにしゃがみ込んで、差し出された手。小指だけがぴんと伸ばされて、それは俺の指を絡め取った。指切りげんまん。なんて子どもみたいな可愛らしい言葉が紡がれて、ああ、なんだか。こんな単純なことで救われるみたいな思いを抱く自分の存在に気付く。単純やなあって。絶対なんて無いのは分かってるし、叶わないことばかりなのも知っているけれど、それでも。ずるい奴。なんて思いは今だけはしまっておくことにした。彼の残した逃げ道も塞がないで、都合の良い部分だけを都合の良いように解釈、しようか。勝手に、彼、をつける。俺がお前をひとりにしない。そうすれば俺は何倍も、幸せになれるから。
 
 
 
 
 
交わした約束
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ついったーより3つの恋のお題、交わした約束
 
111209




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -