カレンダーを捲れば、残る紙はもうたった一枚だ。今年ももうこんなところまで来てしまったのか。なんて薄っぺらいそれにしみじみと思う。けれども一ヶ月、残っている。それをしかではなくてまだと取れば、さほど感慨深くはならない。それでも時が過ぎるのはあっと言う間だ。なんてことは実感する。冬の空気を纏始めた風にも。
 
くしゅんっ。なんて可愛らしいくしゃみが聞こえたから、思わず笑った。自分がそれは似合わへんやろ。そうやって隣の彼に言えば、ちょっとだけむくれて彼は手を伸ばす。だって、寒い。そうやって俺の手を包む手は、確かに冷たかった。
 
「……あんまあったかくないばい」
「勝手に握っといてそれはないやろ」
 
ぎゅっと冷たい手で俺の温度を奪おうとする。なのに、彼の口からはそんな言葉。だから金ちゃんとかにすればええんじゃないの、なんて投げやりに提案をすれば、もう逃げられた後だと彼は笑った。なんや、俺は二番目かいな。なんて思ってはみるけれど、別に嫉妬とかではない。だって俺だって、本当に寒かったら金ちゃんを選ぶ。多分、いや、絶対。本当に寒かったら、の話だけど。
 
「カイロあるから出したろうか?」
「いや、いらんばい」
 
あんまあったかくないなんて言いながらもずっと手を離さない彼を見かねて聞く。最近の気温の変化は不安定だから。そう思って鞄に突っ込んでおいた存在を思い出したのだ。しかしそれにはすぐに否定が返ってくる。つくづく人の厚意を無にする奴。なんて思うけれど、これにはこれで、正解なのだ。握られた手を、俺が握り返すことは無いけれど。
 
「今年ももう一ヶ月しか無いとね」
 
不意にそうやって呟いた、彼の息はかすかに白い。そうか。しか、か。後一ヶ月で今年が終われば、卒業だって目前に迫る。残された時間は、僅かなのである。そうやって認識させられて、考える。でも、考えたってどうしようもないから。きっと、後僅かな時間だって俺は何も変わらないままで過ごすのだろう。それが現実なんだろう。色々考えて、沢山思いを巡らせたって、結局そうなることは分かりきっているのである。
 
しかは寂しいんやな。なんて見当違いは知っていながらも、そちらへと思いを馳せる。寂しい、もんやな。なんて繰り返す言葉の先にあるのは、違うけれど同じなのだ。十月が終われば十一月が来るし、十二月が終われば一月になる。時が過ぎるのは、あっと言う間だ。終わりを迎えるのだって、あっと言う間なのだ。
 
 
 
 
 
 
ビョウメクリカレンダー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
片思いではないけれど、両思いとも言えない二人。
 
111101




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