閉じていた目を開けば、隣には彼の姿があった。どうしてじゃっけ。なんて考えながらに見つめるが、彼の視線は目の前で光るテレビから動かない。そこにはちょっと昔の外国の映画のようなものが流れていて、ああ、そういえば。なんて自分の置かれていた状況を思い出す。二人でソファーに座っていたらたまたま流れていた洋画。することもなく何となく眺めていたら、そのまま。彼は今も真面目に見続けているようだが、俺は途中で飽きて眠ってしまったのだ。彼が好きなものを俺が好きなときもある。けれど、彼の好きなものに俺は全く興味が湧かないときもある。価値観の共有は、そんな程度だった。
 
割と物語の序盤で眠ってしまっていたのだろうか。今さら視線をテレビに注いだって、何の話かは全く分からなかった。でも、正直言って興味が持てないと言うか何というか。あまり面白そうではないな、なんて思う。でも、彼は見ている。寝てたと思ったら起きていきなり邪魔をする。それはいくらなんでも図々しいなって。思ったから黙ったまま同じようにテレビを見ていれば、暗くなる。音はそのまま視界だけ。接触は、ほんの一瞬。
 
「退屈していたようなので」
 
なんて、ひょうひょうと言ってのける彼には思わず笑いが溢れてしまった。なんじゃその、どっからかとってきたみたいな台詞。そうやって腹を抱えれば、ちょっとだけ照れくさそうに彼も笑った。しかし律儀にも今見てた映画ですよ、なんて答えるのが彼らしくって、また、笑う。
 
「楽しませてくれるんか?」
「これが見終わったら、善処しましょう」
 
悪戯っぽく笑って、両手で彼の頬を挟んで問う。しかしそれにもあくまで彼は彼らしく答えるから。今度は思わず苦笑が漏れた。そういうとこは期待を裏切ってくれんと困るのう。なんて、次は俺の方から距離を縮める。唇に触れる。そうして、顔を見合わせて笑って。消されたテレビへと、俺は勝利を確信するのだ。
 
 
 
 
 
って、って、して
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ソファで、苦笑しながら唇にキスをする82」にこにこらぶらぶしてたら可愛いなって。
 
111024




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