まずはじめに視界が奪われた。次に聴覚。そうして、固定される。見えない。聞こえない。動けない。感覚が遮断される。何が起きたのかは、分かっていたから慌てることはないけれど。どうしてこんなことになっているのだろうかと考える。大きなタオルで包んで抱き締めて、封じる。彼は、千歳は、ふとしたときに理解出来ないようなことをやってのける奴だ。だから今さら驚くことではない。でも、分からない。何がきっかけだったのか。何が目的なのか。何も。今回は特にそうだった。
 
でも、不思議と初めてでは無いような気がして、持て余した時間の中で記憶を辿る。ああ、これは、あれかな。そうやって考えてみて、思い当たったのは実体験でも何でも無くて。なんとなく聞いたことがある実験の話だった。視覚や聴覚を奪って体の動きも固定して、人は何もせずにいられるものなのかを問う。みたいな。よく覚えてはいないけれど、そんな実験だった気がする。それに、似てるなって。
 
(なら、しばらくはこのままなんかな)
 
それだって訳では無いのだけれど、なんとなくそう思う。実験では多くの人がそう長くは持たなかったらしいれど、確かにそれは頷けることだなあなんて身を持って経験し納得。単純に、暇なのだ。だから、なんとなくぐるぐると思考は巡る。けれどもそれだって長くは続かなくて、傾けるは彼の心音。とくん、とくん。そうやって規則正しいリズムを刻むそれに耳を傾ける。しかししばらくすればそこに、不規則な音が混じった。
 
「白石は俺が好き、俺は白石が好き」
 
まるで呪文みたいやなって思う。そんな風に繰り返される言葉。しかし全てを遮られた俺には、それは鮮やかに届く。いや、鮮やかでは語弊があるだろう。他の色は知らない。それだけが唯一。そうであるのが当然みたいな。ああ、これは、あれかな。そうやって、本日二度目の心当たりもやっぱり延長線なのだ。だから、つまり、そういうこと。そうやって納得するが、分かってしまうと案外どうでもよくなってしまうものなのだ。まあ、別に今さらどうにかしようとする気も無いのだけど。きっと、このどうしようもなさも全部全部それだから。
 
(すき)
 
繰り返される言葉を拾って口にして見るけれど、形になったかは分からなかった。でも、きっとそれで良いのだろうなんて思う。多分、もう手遅れだから。それは完了してしまったから。なんて自嘲気味に笑ったって、伝わらない変わらない何も。だから、すき、って。洗脳。なんやな。
 
 
 
 
 
内包するそれに内包させる
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
感覚を遮断された中での言葉には洗脳されやすい。らしいです。
 
111018




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -