いつの間にかに日が暮れるのが早くなった。冷たい風が頬を撫で、思わずぶるりと体が震える。昨日は学ランを着たままではとてもじゃないけれど過ごせない。それ程までに暑かったと言うのに、今日は学ランだけでは寒いぐらいだった。そろそろカーディガンを用意した方が良いかな。なんてぼうっと考えていれば、隣を歩く彼が首をちょこんと傾ける。
 
「光、寒いん?」
 
心配。みたいな色を含んでこっちを見る彼には、ちょっとだけ笑いたくなってしまう。彼は時折俺に対して過保護過ぎるきらいがあるのだ。でも別にこんなところで嘘を吐く必要はないし、吐いたところで得をすることもない。だから素直に頷けば、急に。伸びたのは彼の手だった。
 
いきなりのことに理解が出来なくて、黙ったまま彼を見つめてしまう。そうすれば彼は赤くなった顔をわざとらしく背けた。でも、ぎゅっと握って、にこっ。こうすればちょっとはあったかいやろ、なんて。よくあるドラマとか少女漫画みたいな台詞を吐くから。こんなところで何してるんですか、あほちゃいますか。そんな言葉は思わず飲み込んでしまった。だから、黙ったままそのままで、歩く。何も形にならないまま、それだけが確か。
 
「今日はちょっと回り道して、帰らん?」
「……ええですよ」
 
もう日は完全に暮れてしまっているから、遠目に見ただけでは俺たちの繋がった指先には気付かないだろう。だから、ええかなって。気が緩むのは、それだけが理由ではないのだけれど。彼の言葉に肯定で返せば、彼はまたにこっと笑みを見せるから。
 
指先から伝わる温度に、どうしようもなくなる。あったかくて、いとしくて。でも冷たくなった風には確実に近づき始めた終わりを感じて、泣きたくもなった。そんな矛盾を孕んだ帰り道。ずっと、ずっと、回り道が出来たらな。なんて、どうしようもない願いを抱く。でも、分かっているから。でも、分かりたくはないから。せめて今このときだけは、なんて、ぎゅっと彼の手を握り返して願った。どうか、ずっと、ずっと。彼と。
 
 
 
 
 
指先にんだ感情
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
大好きな蒼ちゃんのお誕生日に。季節の変わり目に色々思う謙光。
 
111007





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