何年、何十年、数え切れない程の年月が経っても色褪せないものがあるとしたら、それはきっとあれなんだな。と、思う。この世界で唯一絶対に手に入れることが出来ないと公言出来るものがあるとすれば、それは、時間。そう言い切れるのと等しいぐらいに絶対だった。つまり、何かって。これほどまでに厄介なものは他に無いよねって話。
 
「何してるの?」
「ん、ちょっと懐かしい物を見つけて。」
 
彼の手には四角く切り取られた世界。でもそんなのは所詮気休めにしかならなくて、あの時はもう二度と手に入らないことぐらいは考えなくったって容易に分かってしまう。それによって縛られることはあっても、こちらから干渉し、ましてものにしようなど不可能な話なのだ。なのに、それは色褪せない。決して色褪せることなく今も、確かに存在する。だから、厄介。もう二度と触れられないのに確かに色褪せない存在に思い馳せる僕たちは、馬鹿みたい。
 
ちらりと視線を写真ではなく、彼に注げばゆらゆら。懐かしそうに嬉しそうに笑う顔とは裏腹に、瞳に滲む色は昔から変わらなかった。あの時から。多少前向きな意味での変化はあったかも、しれない。でもそれに確証は無い。確かに変わらずにうつっていたのは涙。それが色褪せないのとそれが手に入らないのと、同じぐらい確かなものの一つだった。残念ながら。
 
「シリウス」
 
小さく名前を呼んでみれば、なんでもないみたいに彼は笑うから。僕もなんでもないように笑ってやった。そんなやりとりで確認するのは馬鹿みたいな僕の感情。ああ、これだってずっとずっと変わらないんだ。これも確実。ずっとずっと、言うつもりはないけれど。厄介だと思うのに手離せないそれを、含んで、僕はそっと彼の頭に触れた。
 
 
 
 
 
変わらずにり続けるもの
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
とても久しぶりに。鹿犬のつもりはありませんが、狼→犬寄りかもしれません。
 
110307




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