思っていたよりも幾分も簡単に、それは日常と化した。元は交じらない線。それを交わらせていたのはテニス部での日々だったから。正直な話、それが無くなったらおしまいだと思っていた。考えても、それ以上の共通事項は無いから。なんとなく一緒に帰って、寄り道をすることもあったり、彼の家に行くこともあったり。そんな日常が日常で無くなるのも時間の問題だって思っていたのに。結局俺は、今もその中で生きている。
 
「寝てるんですか」
「ん、ちょっと考えごとをしてただけぜよ」
 
彼のベッドに勝手に横たわって、枕に顔をうずめて。勉強を教えてだとかそんな名目で部屋に入っていた頃は咎められたその行為も、今は当たり前のように受け入れられている。言われればある程度のことはやるけれど、言われてもやりたくないことは絶対にやらない。そんな俺の態度に彼も慣れてしまっているのだ。そんな俺を彼はそのまま置いておく時もあるけれど、今日は歩み寄ってきたかと思えばベッドに寄りかかるようにして座った。だから、必然的に距離は近い。
 
「何か悩みごとでもあるのですか?」
 
心配気に彼は俺を覗き込んで問う。焦ったり、慌てたりはしなくとも、本当に俺を思って聞いてくれている。そう感じることの出来る声色は聞いていて心地が好いものである。でも、悩みとは違うから。俺は素直に首を振った。そうして、考える。なんだろうなあ、なんなのだろうか。彼に伝えたいこと、伝えるべきこと。選んだら良いのはどんな言葉。そうやって、真面目に考えてみる。けれどもこれがなかなかに難しい。いざ、形にしてみようとしたらどれも違うような気がするし、なんていうか、あれ。恥ずかしい。
 
「当たり前って案外簡単なんじゃな、って」
「そうですね、少し、手を加えれば」
 
迷って、迷ったままの言葉をそのままで形にすれば、思いもよらぬ肯定を受ける。だから、あれ。不思議に思って彼を見ればにっこりと笑うから。ああ、やられた。そうやって理解する。二本の平行な線にだって、たった一度でも角度がつけばそこにはもう交点が生まれる。つまりはそういうこと。全部彼の思考の範疇だったのである。違った。簡単なのは俺の方だったのだ。
 
悔しいなぁ。なんて思って頬を膨らませてみたってそんな行為には何の意味も無いなんてことは自分が一番よく分かっている。だから優しげに笑ってみせた彼にならって、同じように笑い返す。もう、交わってしまったのだから。今さら解くことは出来ないし、解くつもりも無いから。伸ばした腕からまた、絡める。
 
 
 
 
 
 
点の作り方
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
蒼ちゃんに82!柳生優勢な感じを目指したのですがなんだか上手くまとまらなかった感が否めない…。
 
110910




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