彼を通して見る世界は、幾分も輝いて見える。気がする。何でもないようなことだって、そこに彼と言う存在がある。それだけで違って見えた。そうやって笑って言ってみせれば、過大評価をし過ぎだと笑い返される。
 
氷みたい。氷みたいにきらきら。氷で創られた彫刻が余すところなく、全身で輝く、みたいな。そう表現すれば、言うほどに綺麗じゃないと彼は続ける。表面は幾ら綺麗だろうとも、その内側に何を孕むかなんて分からないだろって。むしろ、池や湖、水たまりに張る氷はその汚さを隠しているだけなんじゃないかって。なるほど、そういう解釈もあるんやなあ。彼のそんな言葉には素直に頷く。でも、氷は一定量をこえた不純物を含めばできないものである。確か。
 
「だから、やっぱり綺麗やで」
 
そうやってもう一度笑ってみせれば、彼は困ったみたいに笑った。そうして今度は続かない。彼が、顔を伏せるから。
 
「どうしたん?」
「…いや、お前、俺のこと好き過ぎんだろって、思って」
 
伏せたままで言うから、表情は分からない。けれど楽しそうな声色だから、ふざけて言っているんだろうとは思う。でも、ちょっとだけ赤みがかった耳。触れてみたい、とは思ってもそれはなんだか躊躇われる。冷たかったらどうしよう。溶かしてしまうかもしれない。みたいな。でも、怖いとかじゃなくて、勿体無いんだろうなあと思う。あまりにも綺麗なものには、触れてしまっては勿体無い。
 
「なんやそれ、今さらやなあ」
 
彼の言葉に遅れて答えれば、彼は真面目な表情のままで俺を見た。だから、ああ、違うなって。本当は今すぐにでも、触れて溶かして暴いてやりたいんやなって。思って、笑えば、彼も笑った。きらきら。
 
 
 
 
 
りごしに
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
杉本さんに忍跡!まだイメージが固まらないためよく分かんない感じになりましたが両思いかな多分。
 
110910




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