「幸せになる方法なんて、簡単だよ。」
 
問うてもないのに目の前の男は言葉を紡ぐ。うっすらと浮かぶ笑み。自嘲するようなそれになんとなく違和感。不快感。こんな男は無視してしまえば良い。そんなことは分かり切っていた。なのに馬鹿な俺は繋げてしまい、自分の中だけで悪態を吐く。まあ、いまさら。前からずっとそうやって続けているのだから、いまさら。それでも悪態までをも繰り返す。そんな人生で提案される、幸せの方法論?
 
「上なんて、見なきゃ良いんだ。そうすれば足りない物を求めることもない。下だけ見て優越感に浸ってれば良い。それだけで幸せになれる。そんなもんなんだよ。」
 
にこり、笑って。そこに笑みなんて、なくて。俺はただ、見る。なんなの、お前は。結局、どうなの。それだけを訴えるように、黙視。それでもやはり、言葉は紡がれる。淡々、延々。
 
「相手に自分が持ってないものを見るから、羨むんだ。それならば相手より自分が持っているものを見れば、浸れる。間違いじゃ、ないよね。」
 
五体満足な自分は、どこか欠けている誰かよりも幸せじゃないか。最低限の衣食住の確保が労せずとも手に入れられている自分は、幸せじゃないか。紡ぐことの出来る自分は、こうして生きている自分は、あの人よりこの人より。繰り返し、繰り返し。なのに不意に止まる言葉。でもねで続く、逆説を導く接続詞で。
 
 
「俺、駄目みたい。君がいない世界には幸せなんて見いだせなくなっちゃった。」
 
 
他の誰と比べたって駄目なの。なんて笑ったふりなんかしないで、でも泣くなんて許せなくて。彼の自分勝手な理論に俺はわざとらしく溜め息を吐いた。そんなの、強要。幸せの強要、じゃないか。彼が幸せなら俺も幸せ。生憎俺達はそんな関係では無かった。無かった、のに。馬鹿。なんて俺の口から漏れた言葉は笑ってて、思わず自分を苦笑した。
 
 
 
 
 
 
しあわせ方法論
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
受けとか攻めってなんだろう。な、迷子な感じになりました。
 
110102




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