ふわふわとした意識の中に、ふわふわと花の香りが漂った。なんで、花なんて。そもそも俺はなにしてたんやろ。目を薄く開いて考えれば、真っ先に捉えたのは黒だった。あれ、あれ。なんかおかしくあらへんか。そう思ったと同時に意識は覚醒。慌てて身体を起こせば散る。目の前の黒は笑う。
 
「お姫様のお目覚めたい。」
 
にっこり。楽しそうな、嬉しそうな、幸せそうな。そんな笑顔を見せるから、ちょっとだけ怯む。けれども冷静に状況を理解しようとする。横たわっていた俺、隣に座る彼。真っ昼間、公園、木陰、花。なんでだっけ。
 
「珍しか。よう眠っとったばい。」
「……千歳が?」
「うんにゃ、白石が。」
 
先に寝ていたのは自分の方だけど。そう付け加えて、彼はまたにこりと笑った。寝ていた彼を起こしに来て、そのまま隣で寝てしまった。多分、そんなとこだろう。そう理解した俺は自分のだらしなさにはぁっと溜め息。くしゃりと前髪をかきあげるようにすれば、ふわりと香り花が落ちる。
 
(あわいぴんく)
 
これはなんの花だっけ。と言うよりも、どうして俺の周りにこんなに花があるんだろう。予想はつくが、不思議に思う。とりあえず、目の前の彼の言い分を聞こうか。そう思って視線を移せば、彼の手は俺の頭。
 
「こうすると白石はますますむぞらしかね。」
 
そう言いながら、落ちた花を次々に拾い上げては乗せる。犯人は明確。なのに理由はちっとも分からなかった。だけど、だけど。なんだかんだで彼のされるがまま。好きにされていると言う自覚はあるけれど、だからどうと言う訳ではない。なんでって、そんなの
 
はぁ、今度は大きな溜め息が出た。ふわふわの中にいる自分に。それを心地好いと感じている自分に。なんでこんな簡単に絆されてるんやろ。そう思ったって、顔が笑みを作ってしまうのはきっとずっと彼が笑うから。ずっと前からきっと。また漏れる俺の溜め息に、こてんと彼は首を傾ける。阿呆。そんなのお前みたいな大男がやったって可愛くもなんとも無いわ。そう思うのに、すくい上げて俺の手は彼の頭。黒に淡いピンクが咲いた。こんなの、似合わんなって、また
 
 
思考と行動が上手くリンクしない。しなくなったら最後って、知ってた。だから、もう、手遅れ。伸ばした手は伸びたまま。揺れる花だけが唯一、止まらない時間を知らせた。
 
 
 
 
 
 
いをけてさい)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『「昼の公園」で登場人物が「好きにされる」、「花」という単語を使ったお話』多分、両思い。一応、花水木。
 
110818




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