休憩時間、俺は何もせずに椅子に座る。いや、何もせずには間違いだ。ちゃんとしていることはある。ちゃんと、待っているのだ。誰を、は愚問。何を、も愚問。理由なんて聞く必要は、ないでしょう。

「おい、相馬。こんなとこでだらだらしてんだったら、さっさとキッチンに戻れ。」

ほら、来た。予定通りに現れた彼に、俺は内心小さく笑う。タイムシフトは殆ど完璧に頭に入っている。だから、彼がこうしてここに来ていることは必然だ。それでも嬉しい。なんて案外俺は単純。

「まだ、後七分はあるよ。」
「それぐらい余分に働いてこい。」

やーだ。なんて彼の言葉に首を振れば、この時間のキッチンは戦場なんだ。そう彼が真顔で返すから、ちょっとおかしかった。けれども俺にとっては大切なこの七分。無駄になんてしないよ。君を、待っていたんだから。

「…相馬、やめろ。」

目の前に腰を降ろした彼。片手にはいつも通りに煙草が、そしてもう片手は机の上。その後者に指をすべらせてみれば、彼からはすぐにストップがかかる。でもね、それだけ。それだけじゃあ、強い拒絶にはならないよ。それを思って、俺は笑った。満面の笑みを浮かべながら、指先を指先でなぞる。彼が俺を制したのは、その一回だけ。諦めたようにため息一つでおしまい。そんなんじゃあ、自惚れちゃうよ?

「七分。」

不意にぎゅっと指先に力がかかったかと思えば、俺の手を握る彼が言う。何それ、反則じゃないの。そう思う俺をよそにして、無理矢理に休憩室からは追い出される。ちゃんと働いてこい。なんてほんのり赤い頬で言われたら、期待するしかないのに。馬鹿だね。なんて小さく口にして、俺は素直にキッチンに向かうのだ。本当に、馬鹿だよね。彼に握られた手にそっと触れる、俺の方が。





七分間で幸福










ついったーより、『「満面の笑みを浮かべながら、指先を指先でなぞる」キーワードは「戦場」』

100830




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