「雪だ、雪!ほら宮村、外見てみろよ!」

朝っぱらから、嫌と言うほど聞き慣れた彼の声が部屋へと響き渡った。何故、朝目覚めてすぐに彼の声など聞かなければならないのか。こんなことは有り得ない。なんて今更なことを思って、俺は無視を決め込む。しかし一度目覚めてしまえば嫌でも寝る前との環境の変化に気付いて、俺は布団の中から顔だけを出した。

「寒い…」

目覚めて一番初めに目にしたのは、見慣れたオレンジ色では無い。もう今年はしばらく見ることなんてないかな、なんて思っていた白の世界だ。昨日は確か春にしては暑いぐらいの日だった。なのに今窓から見える世界には雪が降っている。まだ、寝ぼけてるのかな。なんて思うが、急な寒さに意識ははっきりとしていた。

「こんな時期に雪?」
「そ、もう春だって言うのに雪!」

布団から体は出さないようにして体を起こせば、やっと声の主のオレンジ色が目に入った。彼はにこりと笑ったかと思うと、ぎゅうっと俺を抱き締めてくる。風邪引くぞ、風邪。なんて口にしながら。そんな彼をいつもなら俺はすぐに振り払うまでだが、今日はそれをしない。それは単純に、温かかったから。それ以上でもそれ以下でも無いのだ。だから俺はそのままただ彼の温かさに体を預ける。そして目の前に広がる雪を見ながら、訪れる春に浸った。





君を春と呼ぼう










100417




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