「百人の愛よりもたった一人の好意が欲しい。」

パンにバターを塗りながら、朝のニュースの星座占いを見ながら、目の前の男はそう抜かした。いきなり何を言っているのかと疑問を持つが、そういう奴なのだ。共に暮らし初めてまだ一月にも足らないのだけれど、だいたい理解した。あまり喋らない人なのかと思えば、まだ不慣れな一家団欒の食事を和ませる言葉を発してみたり。そして今みたいに突拍子も無い言葉を口にしたりと。とにかく訳の分からない男なのだ。あたしはそう、理解した。

「普通逆じゃない?百人の好意よりもたった一人の愛が欲しい、って。」

だからあたしは何故いきなりそんなことを言うのかではなく、何故いきなりそう言うのかを聞いた。砂糖菓子みたいに甘い甘い少女漫画の世界の話をしたいわけではないけれども。世間一般に置いてあたしが正論であるだろうと考える。目を合わせるでなくのあたしの言葉に、彼も視線は自分の手元に注いだままで口を開いた。

「良いんです。合ってるんです。」
「きっとおかしいわ。」
「なんで?」

なんで、なんて聞かれればあたしは言葉に詰まってしまう、けど。じゃあ逆になんでなのって聞き返してやった。百人に愛されるよりもたった一人愛した人にに愛されたいのなら分かる。なのにたった一人の好意で良いだなんて、謙虚過ぎるのではないだろうか。あたしはお気に入りのマグカップに牛乳を注ぎながら彼の答えを待った。すると、彼はいつもの調子でにこりと口を開く。

「愛してくれなくて良いけど、嫌われたままは嫌だ。そして可能性があるのなら少しばかりの好意を持って欲しい。なんて考えている俺は、とんでもなくも欲深い奴だよ。」

誰に。なんて彼は言葉にこそしなかったけれど。君に。彼の口は確かにそう動いた。だから私は驚きにそのままの形で、静止してしまった。なんて、なんてデジャブ。


「溢れてるよ、牛乳。」







君の好意>誰かの愛











>創作で恋愛じゃなくても何でも良いので男女。(リハビリリクエスト)

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