「あけおめ、宮村!」
堀さん達と出かけた初詣で、いやっていうほど見慣れたオレンジ頭と出会った。これだけ人が溢れる中で約束も何もしていない俺たちが出会ってしまうのは、良くも悪くもそんな運命?でも、今お互いに隣に居るのはお互いじゃない。俺には堀さん。彼にはちかちゃん。それは当然、そうあるべき姿のはずなのだけれど。
(なんだか、なぁ。)
なんとなく、変な感じ。俺にも彼にも好きだって心から思える彼女が居て、そこには一つも嘘なんて無いはずなのに。それぞれがそれぞれの彼女を連れて笑うのには違和感を感じてしまうのだ。だから何でこんなことを思わなきゃいけないのかと嫌悪を分かりやすく顔に表せば、彼はにこりと笑って俺を手招き。堀さんは堀さんでちかちゃんと新年の挨拶やら世間話やらをしているみたいだから、俺は彼に従い近付く。すると、彼は俺に囁くように話しかけた。
「そんな顔してたら、堀さんに感づかれちゃうよ。最初の日ぐらい愛する彼女にあげなさい。」
ぺちり、そう頬を叩かれたから俺はつねり返してやる。彼が大人びた様子でそう言うのが気に入らなかったのだ。俺だってそんなのは頭では分かってる。分かってるけれどもさ、お前は違うの?そんな思いが少しでも伝われば良い。少しも伝わらなければ良い。なんて矛盾を抱えたままに見つめれば、今度は優しく頭を撫でられた。
「一日ぐらいあげられるよ。大丈夫だもん、伊澄は俺のだから。」
言い終われば返事なんて求めないで、にこりと笑い彼女のもとへ。だから俺はそんな余裕に溢れた彼へと呆れて溜め息を吐きながら、嬉しくて笑うことしか出来なかった。
憎たらしいぐらいに余裕だね
100119