キスをしようと、ギリギリにまで近付いた進藤に俺はストップをかけた。すると彼はなんでと言いたげな視線を送るが、そのギリギリの距離で俺は彼に話しかける。

「俺、堀さんと普通にキスしてるよ。」

それはずっとずっと言葉にはしなかったけど疑問だった。俺は堀さんを好きなわけであり、恋愛感情と呼べるものも抱いているつもりで。むしろこの進藤との関係の方がどうしたって歪でおかしいはずなのだ。だから、良いのか。俺はこの唇を彼女と重ねて、この手で彼女に触れている。そんな俺とキスしたいとか触れたいとかなんて、本当に思うの?本当に良いの?そんな意味からの言葉だった。しかしそんな俺の言葉に彼は少し顔をしかめて、呆れたように言い放つ。

「俺だってちかとキスしてるよ。この手で触れているし、愛だっていっぱい伝えてる。」

(お前はどうなの。良いの。)

なんて、真っ直ぐに見られたら本当の気持ちを全部吐き出しそうになってしまう。なってしまう、のだけれど俺が今どうするべきかってことを少しぐらいは分かっているつもりだったから。

「それでも、いーよ。」
「じゃあ俺も同じだ。」

俺が笑って見せれば彼も笑って。こうして俺たちは歪な関係にまた一つと嘘を重ねていくのだ。真ん中の気持ちはいつだって一つだったけれども、嘘でも吐かなければこの背徳的な感情を胸に抱いた俺たちには生きにくい世界だったから。





背徳ラヴァー











091124




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